遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

金魚/深堀隆介

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食べない魚はリリース(水に返す)し、死んでしまった魚はありがたくいただきましょう。ということで、スペースワールドのスケート場で氷漬けになった魚を見て、深堀隆介の金魚を思い出した。

画像のたらいを泳ぐ金魚は、本物ではなく描かれた金魚である。

たらいに水代りの透明な樹脂を流し込み、その樹脂に絵筆を使って金魚のパーツを少しずつ描き、さらに透明樹脂を流し込む。これを繰り返して立体的な金魚を創作した。その創作過程は下の動画でご覧いただきたい。

■Goldfish Salvation Riusuke Fukahori 深堀隆介

■【Colors】深堀隆介(美術作家)

食えない時代が続き、アーティストをあきらめようとふと自分の部屋を見たら、7年間も飼育していた金魚が目に入った。そして、この金魚を立体的に生き生きとした立体的な絵に描いてみようと、一念発起してさらに歳月を重ね編み出したのが、この透明樹脂を使った絵画だった。

深堀は、この金魚の絵のアイデアで生計を立てられるまでになった。本人曰く、これこそ本当の「金魚救い」である。

これは絵画としての立体的に見える超絶技巧がすごい。そして何より、泳いでいる姿を形にとどめた樹脂を使った創作アイデアが素晴らしい。私は金魚の影までタライの底に描いているのだと思って感心していたら、影は絵具で描かれた金魚の本当の影なのだそうだ。それはそれで感心する。

深堀は、シューズやデスクの引出しや陶器の鉢など、水が溜まる物には金魚を泳がせたくて、そんなプールを持つ物体やいい器(うつわ)を物色しているのだという。また彼は注文を受けて創作をしない。自由に創作して、気に入ってもらえたら買ってもらうというスタンスなのだそうで、苦労時代が長かったにもかかわらず見上げたものである。