遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

ブラームス交響曲4番/サバタ&ベルリン・フィル

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交響曲第4番ホ短調作品98(1884-1885)
録音: 1939年3月、4月 ベルリン

映画「キューポラのある街」で、主人公のジュンがお金持ちの友達の家で耳にした曲がブラームス交響曲4番の冒頭だった。

洋の東西を問わず人気のある交響曲は、ベートーベンの9番合唱・5番運命・7番、モーツァルトの40番・41番ジュピター、ドヴォルザークの9番新世界、シューベルトの8番未完成、ベルリオーズの幻想、チャイコフスキーの5番・6番悲愴、マーラーの2番復活・5番などと並んでブラームスの1番・4番が定番といったところか。

私はこの夏の終わりに、ブラームスの4番を初めて聴いた。それは、1939年録音の、サバタが指揮するベルリンフィルのCD。グラモフォンのCD・BOXに入っている1枚で、その古ぼけたジャケットは1939年の発売時のオリジナルを復刻したもの。蓄音機を聴く(覗く?)犬のニッパは、当時のグラモフォンのトレードマークだった。のちに、ニッパは日本ビクターのマスコットとして、わが国でもおなじみになった。

はじめて聴いた4番の冒頭は、音飛びしているのではないかと錯覚するようなあいまいな出だしで、ブラームスのイメージとは異なるものだった。別名「ベートーベンの10番」とも呼ばれるブラームス交響曲1番は、重厚なイメージであるのに比して、この4番は音の響きが明るくて若々しい。ことに1楽章と4楽章は、きらびやかなハーモニーが印象的で、世界中で人気を博す交響曲だというのもうなづける。軽くて短くて暗くない交響曲、決して暮らしのじゃまをしない優れものだと思う。

ちなみに、この曲が作曲された1885年の3年後に、マーラー交響曲1番(巨人)を完成させている。

1939年録音の本アルバム。サバタ&ベルリンフィルの演奏や表現方法については、例によってしろうとの私にはよく分からないが、75年前のモノラル録音は、再生しても違和感なく心地よく聴くことができた。映画「風と共に去りぬ」が1939年製作だということを鑑みれば、これくらいの録音が残されていることは驚くに値しないのだろう。

この交響曲の名盤といわれるカルロス・クライバー指揮のウィーンフィル盤も、ぜひ聴いてみたいと思う。