遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

カサブランカ/マイケル・カーティス

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カサブランカ
監督 マイケル・カーティス
脚本 ハワード・コッチ
ジュリアス・J・エプスタイン
フィリップ・G・エプスタイン
出演者 ハンフリー・ボガート
イングリッド・バーグマン
公開 1942年11月26日 1946年6月20日(日本)



パリで出会い、「パリの休日」を楽しんだ恋人たちが、

歴史の渦に巻き込まれて離別れを余儀なくされ、

偶然の再会を果たすのが、フランス領はモロッコカサブランカ


第二次大戦中、ナチを逃れて、リスボン経由でアメリカへ亡命するために、

カサブランカにはヨーロッパ中からさまざまな人たちが集まった。

その雰囲気が映画からよく伝わってくる。

まるでフランス映画を観ているような錯覚に陥る。

いまにも「望郷」のジャン・ギャバンが登場するような気にさせられる。


偶然再会した恋人たちというのは、


当時の二人の実年齢は43歳と27歳であった。

「ボギーのソフトにいかれて」(「タイムマシーンにおねがい」作詞:松山猛

いるお方は、まあほとんどがこの作品のボギーにいかれておられるのだろう。


一方私は、はじめから終わりまで完璧な美しさで、

おまけに紗がかかったレンズでポワンとクローズ・アップになるたび、

何度も「君の瞳に乾杯!」と囁いてもらうバーグマンに、全面降伏。

こんな人が、目の前から忽然と消え去ったとしても、

それがたとえ10年間もの長きにわたり消え去っていたとしても、

じっと待つしかないかもしれない。

カサブランカで、リスボンに連れて行ってくれる航空機のチケットを待つように、

耐えて耐えてじっと待つのかもしれない。


待っているボギーがえらいのではなくて、

待たせられるバーグマンが素晴らしいのだけど、

再会した二人は、さらに戦争の大きな渦に巻き込まれていく。


ハードボイルドな戦時中の大恋愛映画で、

いまさら私が言うまでも無いが、全編名台詞がちりばめられ、

「時の過ぎゆくままに(As Time Goes By)」の音楽がロマンチックで、

きれいな包装紙に包まれた素敵な言葉が書かれたカード付きの、

高級チョコレートのような映画である。


ボギーがゲーリー・クーパーに代わっても同じだろうし、


高級チョコレートが高級クッキーくらいには変身する作品だろうけど、

この作品に限っては、バーグマンにとって代わる女優はいない。


君の瞳に乾杯!