の記事を書いて1年以上たつ、その速さに少しショックを感じる。
気を取り直して、
今回は、モース警部シリーズの最後の作品「悔恨の日」。
コリン・デクスターは、この人気シリーズに自らピリオドを打った。
話は変わるが、映画「逃亡者」の捜査官たちの捜査会議の場面を観ながら、
長女が「ああいう仕事好き」とのたまう。
確かにカッコイイ。
良い、仲代達也や丹波哲郎の一世一代の名演を観られる。
しかし、モースシリーズを読むとそうは格好よくはいかない。
行きつ戻りつ、こんがらがった釣り糸を解くような、
忍耐強い捜査が続くのであった。
各章の冒頭には、よくもまぁいろんな文献から探してくるなと感心する、
しかし、その章を暗示する見事な引用文が紹介される。
序章の引用文
物語は48歳の妖艶な看護婦とその知的な家族、
彼女の夫と長男と長女、を中心に展開する。
彼女は、実年齢とは無関係に、世の男を惹きつける。
実際私も人の魅力と実年齢とは、何の相関関係もないと思う。
例外もなくモースもその看護婦の魅力の虜になる。
また、モースも登場した物語のすべてでそうであったように、
実年齢とは無関係に、周囲の人間が魅力を感じざるを得ない存在でもあった。
看護婦とその家族を取り巻くすべての容疑者達、
よくもまあ個性的な人物を登場させてくれると、
これまた、コリン・デクスターの手腕に感服するが、
かれらのこんがらがった相関図を解いていくモースと、
彼の部下ルイス部長刑事、上司のストレンジ主任警視。
このシリーズお馴染のモース、ルイス、ストレンジの3人、
作者の愛情を注がれた彼らの優秀さが際立つ作品に仕上げられている。
殊に、間抜けな部下と上司だったはずのルイスとストレンジへの、
コリン・デクスターの愛情は、微笑ましくもあり美しい。
この事件はこの3人もこんがらがっていて、
いやはや、世の男性諸君は魅力的な女性を前にまったくだらしがないのだが、
しかし、ふやけた3人の友情は鉄のように固く、
シリーズ最後になって、不思議な展開をみせることになるのである。