ボッコちゃん 新潮文庫
星 新一 (著) 価格: ¥500 (税込)
関西のラジオで、『ねらわれた学園』『なぞの転校生』の作者、
眉村卓が深夜放送の番組を持っていた。35年ほど前の話だが。
眉村はその番組で、リスナーのショートショートを募集して、
良い作品を紹介したり、批評するコーナーを設けていた。
今にして思えば、眉村は30数年前に、ラジオで
現在、枡野浩一が主宰する「かんたん短歌blog」のようなことを、
http://masuno-tanka.cocolog-nifty.com/blog/
ショートショートで、すでにやっていたのである。
ラジオでインターネットサイトを主宰しているにも似た、
画期的なことを、われら少年少女相手に展開していたのであった。
その番組で、眉村が同業の作家、星新一の人となりや作品を賞賛していた。
そのとき少年私は、星新一と出会ったのである。
眉村と同級生のお奨めで、代表作「ボッコちゃん」と出会ったのである。
SFショートショートの50篇におよぶ作品群である。
表紙・カットは、SFの大家、真鍋博である。
中学生だった次女に、これを買ってやったら、
「こわーい、すごーい、おもしろーい」と、読んでいた。
そのとき、私も久しぶりに数編読み返した。
なんでも、中学の「英語」の教科書に、「おーい、でてこい」が、
英語で出ていて、そこから星新一に入門する中学生もいるらしい。
この1篇、「おーい、でてこい」は、深~い
眉村も真鍋博(故人)も、メディアの露出度は比較的多くて、
顔も声もイメージできるが、星新一(故人)はスチール写真のイメージしかなく、声もよく知らない。
どの写真でも、いつも柔和な感じで、上品なアルカイックスマイルが絶えない、
というのが、星のイメージである。ま、オトナな訳である。
作品は、短い。500円の文庫に50篇入るのである。
しかし、短さと重さは比例しない。
キラ星の如き作品群である。
これは、決してジュブナイル(少年少女向け)小説ではない。
私にとっては、ロアルド・ダールの短篇集「あなたに似た人」を超える作品である。
老若男女を問わず、50篇たっぷり、お楽しみいただきたい一冊である。
【目次】
悪魔
ボッコちゃん
おーい でてこーい
殺し屋ですのよ
来訪者
変な薬
月の光
包囲
ツキ計画
暑さ
約束
猫と鼠
不眠症
生活維持者
悲しむべきこと
年賀の客
ねらわれた星
冬の蝶
デラックスな金庫
鏡
誘拐
親善キッス
マネー・エイジ
雄大な計画
人類愛
ゆきとどいた生活
闇の眼
気前のいい家
追い越し
妖精
波状攻撃
ある研究
プレゼント
肩の上の秘書
被害
なぞめいた女
キツツキ計画
診断
意気投合
程度の問題
愛用の時計
特許の品
おみやげ
欲望の城
盗んだ書類
よごれている本
白い記憶
冬きたりなば
なぞの青年
最後の地球人