遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

二菩薩釈迦十大弟子/棟方志功

イメージ 1

2004年3月に、高校受験を終えた長女と西国へ二人旅。

中国地方をグルッと、3泊4日のクルマの旅。

一見、援交中のカップルに見えなくもない、二人旅。

二人は、倉敷を訪れるのは、はじめて。

当然、大原美術館も初体験。


モネやセザンヌなどの作品群に出会える楽しみから、

旅のフィナーレを、大原美術館に設定する。


そこで思いがけない出会いとなったのが、この作品。


「二菩薩釈迦十大弟子

大原美術館の棟方版画館に常設されていた。

この作品で、1955年のサンパウロビエンナーレや、

1956年のベネツィアビエンナーレの版画部門で大賞を受賞。


この作品で、世界のムナカタになった。


「わだばゴッホになる」という志功の夢を、実現した出世作である。

よくぞ、海外でこの日本的な芸術・文化を認めてくれたと、感謝したい。


板木の面を最大限に活かした像、と言われるように、

四角い箱からはみ出しそうな、閉じ込められたような、像もある。


一つ一つが、「像」なのに、生き生きとした生命感にあふれる。

そして、12の像が表装されてまとまると、

ロダンの「地獄の門」の対極にある

天国の門」なのである。


なんとも、穏やかな、平らかな心境に導いてくれる、12の像である。

蓮の池さえ見えてくる。

ロダンの地獄より、こちらのほうが、遥かに素晴らしいと、私は思う。



「流離抄板画柵 31図 [詩: 吉井勇]の内 狐狼の柵」。
http://www.ohara.or.jp/pages/tenji_pages/tenji_munakata02.html

また、この作品は、初めて知った。

狼が、ユーモラスで、狐を背中に乗せた「バス」のようである。

尻尾がちょん切れていようが、お構いなし、

筆ならぬ、刀の勢いがみなぎる、天才的な小品である。

作品の大きさと価値は、このとおり、比例しない。


大原美術館、WEB展示場 http://www.ohara.or.jp/pages/tenji.html



旅は、サプライズの部分がないと、

確めることが目的になり、出会いが新鮮でなくなる。

しかし、次は、大原美術館に確かめる旅をしたいと思っている。


倉敷で、ムナカタが、待っている。