遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

マイレージ、マイライフ/ジェイソン・ライトマン

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先週の金曜日の、NHKの「ハリウッド白熱教室」(第2回 ビジュアルデザイン 映画は見た目がすべて)で紹介された「マイレージ、マイライフ」を鑑賞。
 
主人公は、全米を飛行機で飛び回って、企業の人員整理(リストラ)の代行を請け負うのビジネスマンのライアン(ジョージ・クルーニー)。
「会社はあなたを必要としていません。でも、当面の生活費は工面しますし、転職のお手伝もします」と、リストラ対象者に宣言するお仕事。そういった深刻なお仕事を軽くこなし、仕事で年間322日は自宅に帰らない男の目標は、マイレージを1000万マイル貯めること。
 
しかしライアンは、マイレージほど「重い」ものを他に持つ気はさらさらなく、例えば家族などを持つなんてとんでもないことで、この映画の原題「Up in the Air」は、まさに浮き草暮らしのようなライアンの人生観をあらわしたものだろう。
そんなわけで、恋愛も、大人感覚の後くされのないライトな関係に終始してきた。
行きずりの恋もバリバリのライアンは、あるとき、同じく仕事バリバリの女性アレックス(ヴェラ・ファーミガ)と知り合い、ライトとは呼べない恋愛関係に陥ってしまった。そんなライアンの恋と仕事と人生模様を描いた、ライトな作品である。
 
ライアンの部下に、入社してきたばかりのナタリー(アナ・ケンドリック)が配属されるが、この若い女性が新鮮で少し堅物で面白い。入社した企業の効率化を訴え、首切り宣言は対象者との直接面談ではなくて、PCを利用したネットを利用するべきだと提案し取り入れられる。
しかし、マイレージが稼げなくなることになることを良しとしないライアンは、ナタリーを連れて全米を飛び回り、アナログ・ビジネスの真髄を叩き込む。
 
NHKの白熱教室で取り上げられた「マイレージ、マイライフ」のシーンは、入社してきたばかりのナタリーが、経費節約のためにネット面談の提言を行う会議のシーンだった。
ブルーを基調としたモノトーンの衣装を着た面々が、シリアスな場面を作り出している。こういう場面で「若草の頃」のような天然フルカラーのような画面作りはしないものだという。色使いやライティング(モノクロでは特に)は漫然としているのではなく、場面の状況に応じて使い分けをしているのである。
 
画像は、ライアンが通っていたハイスクール(カレッジだったかも)の階段で、楽しそうに語らうライアンとアレックス。こういう色使いとライティングは、幸せ感がたっぷりなのだが、この幸せ色がいつまで続いていくのか、人生の先は見えない。だから、楽しくて面白い。