利腕 ハヤカワ・ミステリ文庫 (HM 12‐18)
ディック・フランシス (著), 菊池 光(訳)価格: ¥756 (税込)
ディック・フランシスは、女王陛下専属の騎手で、何度か障害の英国チャンピオンになっている。
私は、世界最大の障害レース「グランドナショナル」で、先頭を走る彼が騎乗していたデヴォンロック号が、ゴール前で落馬した映像を見たことがある。
なんとも不幸なレースであった。
そのフランシスが、騎手引退後に作家に転進した。
世界一馬に乗るのが上手い作家になったわけである。
書店に行き、ハヤカワ文庫のコーナーの前に立つ。
一番多いのは、まず間違いなく赤いアガサ・クリスティー。
次に多いのが、普通は、緑のフランシスである。(ロバート・B・パーカーや エド マクベインも多いけれど。)
漢字二文字のタイトルの、緑の背表紙の文庫がずらーっと並んでいる、はずである。
何冊か読んでいるが、今となっては何を読んだのかよく憶えていない。
最初に読んだのがデビュー作「興奮」。
一番面白かったのが、「利腕」。
主人公は、障害で落馬をして引退した元騎手の探偵シッド・ハレー。
この作品は、
1981年の「アメリカ探偵作家クラブ賞受賞」最優秀長編賞
http://www.aga-search.com/prize2.html
1979年の「英国推理作家協会賞受賞」ゴールド・ダガー賞
http://www.aga-search.com/prize1.html
を受賞している。
この二つのクラウンだけで、何の説明も要らないと思っていただきたい。
いわば、ミステリー界のノーベル賞とアカデミー賞を、同一作品で受賞している。
ディック・フランシスのミステリは「競馬シリーズ」と呼ばれるが、競馬はほんの小道具に過ぎない。
本格的な、ジョンブル魂たっぷりの渋い立派なミステリである。
シッド・ハレーのシリーズは、「大穴」「利腕」「敵手」と3作が発表されており、できれば順に読まれたい。
私は「利腕」から読んだが、それでも良いとは思う。
これだけを読んでも、良いとも思う。