遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

クール・ストラッティン/ ソニー・クラーク

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「クール・ストラッティン」
アート・ファーマー(tp)、ジャッキー・マクリーン(as)、ソニー・クラーク(p)、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)
(1958年1月5日録音)


 学生時代に定期的に購入していた雑誌が、「スゥイング・ジャーナル(SJ誌)」と「スクリーン」。

 「スクリーン」の、双葉十三郎「ぼくの採点評」の☆の数を拠りどころに、映画館に通っていたものだ。
 淀川長治の短評も、言うまでもなく参考にしていた。

 この二人のレギュラー執筆人がページを持っていたので、また写真や楽しい記事が豊富だったので、ミーハー系の私は「キネマ旬報」ではなく「スクリーン」を毎月購入していた。


 一方、SJ誌は、☆マークならぬ「メガホンおじさんとワニ」マークで、新譜や復刻盤を、執筆人が採点していた。

 当時の編集長は児山紀芳、この人は、いい声の話し上手な編集長であった。
 執筆人は、油井正一、岩浪洋三、野口久光鍵谷幸信等々。月刊誌だったこともあり、丹念に記事や評論を読んだ。


 映画もジャズも、そのような名ガイド雑誌のおかげで、効率よくいい映画やジャズとめぐり合うことが出来た。
 片っ端から映画を観まくり、レコードを聴きまくり、偶然いいものと出会うほうが感動も大きいし、趣味人の歩む王道なのだろうが、貧乏学生には叶わぬことであった。

 ソニー・クラークの「クール・ストラッティン」は、SJ誌で知った名盤のひとつである。
 我が国では、いまだに売れ筋の、人気のあるアルバムである。

 アートファーマーとジャッキー・マクリーンの、トランペットとアルト・サックスのユニゾンフレーズは、曲の冒頭にお約束のように登場するが、これは退屈な向きもあろうかと思う。(そこがいいという向きが多いと思うが。)

 しかし、各人のソロになると、これぞハードバップという、インプロヴィゼイション(即興演奏)を聴かせてくれる。この部分がたっぷりあるので、ご安心を。

 ソニー・クラークのピアノソロは、軽やかで上品で、金管の二人の熱を冷却してくれる。

 ソニーは、ポール・チェンバース(b)、フィリー・ジョー・ジョーンズ(ds)とともに伴奏側にまわっても、実にステディな仕事をこなしている。

 この、リズムセクションの3人の見事な仕事っぷりを聴く価値はある。


スイングジャーナル読者が選ぶジャズ名盤ベスト100
第9位