遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

オイル/NODA・MAP第9回公演

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NODA・MAP第9回公演「オイル」=読売演劇大賞最優秀作品賞受賞 
(2003/5/30~6/15) 大阪・近鉄劇場 作・演出:野田 秀樹/美術:堀尾 幸男/衣装デザイン:ワダ エミ
出演:松たか子藤原竜也小林聡美片桐はいり山口紗弥加北村有起哉野田秀樹

YouTubeでほんのさわりを→http://www.youtube.com/watch?v=tSpVTs1gpU4

 私の野田秀樹の過去の履歴は以下の3回。
「贋作・桜の森の満開の下」第37回公演・劇団夢の遊眠社公演 
 http://blogs.yahoo.co.jp/tosboe51/5168872.html
ゼンダ城の虜」第43回・劇団夢の遊眠社解散公演
 http://blogs.yahoo.co.jp/tosboe51/6620328.html
「カノン」NODA・MAP第8回公演
 http://blogs.yahoo.co.jp/tosboe51/7378184.html

 2003年5月に、当時中学生だった娘ふたりも、観劇デビューということで、チケット4枚ゲット。9000円×4人で、36000円の芝居見物。

 例によって、芝居の内容は良く憶えていない。野田の芝居を意味づけることに、意義を見いださない。
 「地下鉄のザジ」の紹介で書いたことを繰り返すが、「分かりやすいことが映画の真髄ではない。演劇も然り。文学も、音楽も、絵画も、人間も然り。」

 分かり難いが、野田のメッセージは自分なりに受け止められる。彼とほぼ同年代の私は、深いところで同じ精神世界があると思っているが、親しく話したこともないのでよく分からない。
 ま、楽しめればそれでイイ。

 この舞台の衣装デザインが、黒澤明「乱」で第58回米国アカデミー賞の衣装デザイン賞を受賞した、ワダエミ。あのNHK「阿修羅の如く」の敏腕ディレクター、ガハハ和田勉の奥方である。

 いつも野田の舞台の衣装は、センスいいと思っているが、このワダエミの衣装ももちろん文句なく素晴らしい。
 松たか子片桐はいり親子の着る、和風モダンの上下共生地の衣装などは、家に飾りたいくらいお洒落であった。

 その衣装を身にまとった松たか子、冒頭シーンで、すでに舞台中央で電話交換手。

 うちの娘どもは、この最初から登場しているこの交換台の女優が松たか子とは気付かなかったようである。
 そんなに悪い席ではなかったし、藤原竜也小林聡美はすぐ判ったのに、松たか子はいつ登場するのだろうかと、少しの間思っていたようである。

 TVやCMでお馴染みのおねえさんのイメージが邪魔をしたのであろう。
 娘たちはそれがいい意味でショックだったようだ。
 この舞台で見た松たか子は、美人で優しそうな育ちのいい「となりのお嬢さん」とは、別人だったことがきっとショックだったであろう。

 といっても、別に悪女を演じていたわけではなく、ただただ無垢な純なカッコイイ役なのだ。
 特に野田の芝居の定番、ラストの感動シーンは、彼女の独壇場であった。
 観るものの心を揺さぶり、涙が止まらないシーンであったであろう。

 女優とは、こいうことを表現する職業なのだと、娘どもはわかってくれたと思う。(わが娘を女優にしようという気は毛頭ない、念の為。)

 この年2003年の紀伊國屋演劇賞を、この演技で松たか子は受賞している。同じく別の舞台だが「ハムレット」で、藤原竜也が受賞している。

 松は、ザラブレッドだし、藤原は蜷川に鍛えられているし、この受賞や、「オイル」での素晴らしさは当然であろう。
 ここでは関係ないが、最近の阿部寛も、つかこうへいに認められ鍛えられ、ブレイクしたように思う。

 でも、想像だが、彼らが素晴らしくみえるのは、目の前の観客が息を飲む音が聞こえ、それに応えるために努力するからだと思う。
 熱い視線が注がれるのを、感じるからだと思う。
 それに応えて、稽古に励み、舞台の上で大きくなっていくのだと思う。

 娘たちが、ぽつりと「また、オイル観てみたい。」と、なにを確かめたいのか異口同音に謂う。

 野田・地図公式サイト(http://www.nodamap.com/)では
 NODA・MAP第11回公演「贋作・罪と罰」上演決定!
 2005年12月~2006年1月 東京公演  2006年2月 大阪公演
 とだけ告げている。