遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

宮本武蔵/吉川英治

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宮本武蔵」(1)~(8)   吉川英治歴史時代文庫
吉川 英治 (著) 各 ¥734 (税込)


 「読書サークル」を作っている。といっても、私と妻と、二人の共通の知り合いのKさん(男)の3人で1冊の本を回し読みしているに過ぎないのだが。

 私が本を買う。私たち夫婦がまず読む。Kさんが喜んでくれそうなのをKさんに回し送る。という単純な読書サークルである。時には、リクエストに急かされて、私たちが読まないままKさんに回すこともしばしば。

 Kさん曰く、私達推薦の本に「ハズレはない」ようである。

 もう20年近く前になるだろうか、父親が買って読了していた、吉川英治宮本武蔵 全8巻」の1巻目を何気なく手に取り、手に取ったからちらっと読み始めて、やめられなくなった。

 当時の私は、海外ミステリー派だったので(今もだけど)、吉川英治宮本武蔵も、まったく興味がなかった。

 しかし、これは面白いと思い、1巻読み終ったところで、妻に奨める。

 妻は、私より1.5巻くらい遅れて読み始めたのだが、面白くて面白くて、一気に私に追いついた。

 「早く読め」とせっつかれるので仕方なく、遂に私は読みかけの4巻目だったかを妻に譲った。

 当然Kさんにも、回付したが、二度も追い越されてはたまらないので、十分な間を取った。

 「バガボンド」は、読んだことがないが、きっと吉川の原作がベースなのでベストセラーなのだろう。

 この作品は、我が国最高峰のエンターテイメント小説である。しかし、活字媒体だし、武蔵の精神性をうまく映像化できないだろうから、映画「七人の侍」のようにワールドワイドな普遍性はない。

 むろん、武蔵は映画化はされているが、1本の映画にするには間尺に合わないので、パーツに分けられたり、巌流島だけをクローズアップしたものになっている。
 内田吐夢監督作品(1961~1965年)は5作のシリーズになっているが、映画ではこれがベストか。(武蔵:中村錦之助、小次郎:高倉健

 黒澤明宮本武蔵を映像化できるか、一度は考えたかもしれないなあ。


 武蔵VS小次郎の巌流島の決闘は、知らない人はいないだろう。
 しかし、他にも見せ場はしっかりたっぷり。

 たとえば、前半のハイライト「京都一乗寺下り松の吉岡一門」との決闘場面は、息をもつかせず一気に読ませる。
 このシーンを読んでるときは、呼んでも返事しないよ!

 「読書サークル」は、まだ続いている。
 昨年読んだ吉川の「三国志」は、妻は読んでいないし、Kさんにも回していない。
 私の採点では、武蔵90点なら、三国志は75点なのだ。異論はあろうが、三国志はKさんに送るのは止めようかと思っている。