遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

舞妓林泉/土田麦僊

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 「舞妓林泉(ぶぎりんせん)」
   画:土田麦僊(つちだばくせん)
   大正13年 彩色・絹本・額 217.7×102.0cm
   東京国立近代美術館所蔵


 TV東京の「美の巨人たち」で「あなたが選ぶ一枚 / 絵画史上もっとも美しい女性の肖像画は?」

 こんどは、番組と同時進行で、日本編の予想をしたが…。

 マイベスト1と、黒田清輝の「湖畔」が真っ先に頭に浮かんだ。が、あとが続かない。

 そのうちCMが終わり、番組が始まり、菱川師宣見返り美人」や喜田川歌麿上村松園「序の舞」や竹久夢二と、ベスト4が発表され、1位が黒田清輝の「湖畔」と、あっさり発表されてしまった。

 この1位に異論はない。私もそう思う。
 遠い昔に始めてこの絵を見たとき、「綺麗なおねえさん」だなあと思った。(こればっかり。)

 誰でも知っている、わが国を代表する肖像画である。

 ただ、私のなかでは甲乙付けがたいもう一枚の絵がある。予想は黒田の「湖畔」であったが、
マイベスト1は、こちらのほうである。

 それは、土田麦僊「舞妓林泉図」である。

 手前の舞妓さんの可愛らしい表情と、腰掛けた全体の姿のたおやかさが素晴らしい。
 それと、背景のグラフィックデザインのような庭園が、見事である。

 大正時代に描かれた日本画にしては、モダンな味わいのある一枚である。

 麦僊は、ヨーロッパへ留学して、後期印象派ルネサンス絵画の影響も受けているようである。
 この絵は、モナリザを意識して描いたともいわれている。

 背景の雰囲気が、ダビンチのそれと似ているのも頷ける。

 私は、モナリザよりこの「舞妓林泉図」のほうがお気に入りである。
 ルーブルへ行くまでもなく、TOKYOにも良い物がどっさり在るのである。

 この絵は、確か一度京都国立近代美術館で、何かの展覧会を見ていたときに、常設室で偶然出会ったのだ。
 「えっ、この絵はここに在ったのか」と驚いたのだ。だから、ずっと京都に常設されていると思い込んでいた。

 私が京都で観たのは、掛け軸だったように記憶している。(東京のは額装のようである。)
 素描ではなかったから、もしかしたら、レプリカだったのかもしれない。

 東京国立近代美術館では、この絵は常設されているのだろうか。所蔵作品展をこまめにチェックして会いに行くほかはないのであろうか。