英国の小さな村で起きた殺人事件。「いかにも」という動機を持った犯人候補者たちが捜査線上に浮上し、アティカス・ピュントという風変わりな名前の探偵が犯人を特定できたところまでこぎつける。
ここまでで上巻が終わるのだが、もう犯人があばかれるのか?ちょっと展開が早くないか?といぶかしく思いながら読者は下巻に流される。
下巻、「カササギ殺人事件」の犯人が冒頭で暴かれる。その流れのはずが、物語は違った展開を見せはじめる。下巻で380ページもあるのだからそういう展開になるのは必然。ここからが本書の真骨頂で、これ以上はネタばれになるので書かないが、愉しい流れになってくる。
ミステリーは、(必ずしも殺人とは限らない)犯罪者を捜しだす、あるいは、読者には認知されている犯罪人がどのように追い詰められていくかを扱った小説なのだが、人間にまつわるあらゆる要素(人はどう生きるべきかみたいなことから始まるすべての要素)やあらゆる人間が類型化(それは古今東西で偏りはない)されて登場するので実に愉しくて悩ましい。
本書に限らず、古くから優れたミステリーがいくつも存在していていまだに色あせていない。海外ミステリーがもっともっと読まれることを願うばかりである。