遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

羅生門/京マチ子

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京マチ子さんの代表作をもう一作、「羅生門」(監督・黒澤明)のレビューを再掲する。

黒澤明の「羅生門」がお気に入りの有名人。 ( )内は職業、映画監督は(D)。

手塚治虫サム・ペキンパー(D)、藤子不二雄A、ジョン・ヒューストン(D)、スパイク・リー(D)、フェデリコ・フェリーニ(D)、ジョン・レノン広井王子(作家)、シラク元大統領、チャン・イーモウ(D)、小松左京(作家)、ガルシア・マルケス(作家)、マッツ・エック(振付家)、村井さだゆき(脚本家)、ぺ・ヨンジュン水口哲也(ゲーム作家)、イングマール・ベルイマン(D)、中曽根康弘(元首相)、村山富市(元首相)、淡路恵子(女優)、クラウディオ・アバド(指揮者)、ロジャー・コーマン(D)、原田眞人(D)、奈良橋陽子(作詞家)、増村保造(D)、スコット・デリクソン(D)、新藤兼人(D)、デニス・ホッパー(D)、ウィンストン・チャーチルアニエス・ヴァルダ(D)、リー・J・コップ(俳優)、モーリス・ジャール(作曲家)、石川賢(漫画家)、キンバリー・ピアース(D)、フランソワーズ・サガン(作家)、パク・チャヌク(D)、ジェイソン・ベア(俳優)



監督 黒澤明 
脚本 黒澤明橋本忍 
出演者 
田吉二郎
音楽 
撮影 
配給 大映 
公開 1950年(昭和25年)8月26日 
上映時間 88分 


「真実は藪の中」という慣用句がある。
芥川龍之介の「藪の中」から派生した慣用句で、それを黒澤明が映画化した。
それが「羅生門」である。

芥川の小説「羅生門」のシーンも一部取り入れていて、
京の街中の荒廃した羅生門の下で、雨宿りする3人の男の語りで物語が終始する。
志村喬が目撃した、三船敏郎京マチ子森雅之の藪の中の物語が映画の本線になる。

森雅之が何ものかに殺され、下手人として三船が捕らえられ、検非違使の前で事件の真相を語り始める。
他に、森の妻である京マチ子、事件の目撃者のきこり志村喬、殺された森雅之の霊が乗り移った巫女本間文子
下手人三船を捕らえた加東大介、京都の街中で京マチコを乗せた馬を引く森を目撃した千秋実
検非違使の庭で6人それぞれの口から事件を語る。

藪の中で寝ていた狼藉者の盗賊三船敏郎の前に、
京都から新妻の京マチ子を馬に乗せその前を通りかかった武士森雅之
揺るぎのない事実は、武士森雅之は藪の中で死んでいたことだけで、
彼がどのように死んだのかが、証言が少しずつ食い違ってくる。

事件の当事者である三人の証言と、事件の目撃者志村喬羅生門での回想シーンが、
宮川一夫のカメラを通した目線に取って代わり、
三船敏郎京マチ子森雅之の主演三人による、4回にわたる真相に迫る物語が展開される。

この三人による4通りのストーリーは、彼らの一世一代の名演技に支えられていよう。
芥川龍之介の「今昔物語」をベースにした物語では伝わってこない、
魂をむき出しにした人間が繰りなす迫真のシーンが連続する。

宮川のカメラが、木漏れ日の下で繰り広げられるシーンを見事に拾い上げる。

芥川の小説にはない最後の羅生門志村喬ヒューマニズムは、後の「生きる」の主人公をイメージさせ、三船が演じた盗賊多襄丸は、心を入れ替えて「七人の侍」の菊千代となってくれたような気がするが、それも、真相は藪の中である。
 
1951年 ヴェネツィア国際映画祭グランプリ(金獅子賞)受賞