遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

留学生や実習生からピンハネする国ニッポン

イメージ 1

ルポ ニッポン絶望工場  出井 康博  (著)  (講談社+α新書)  

かつてご紹介した「ルポ ニッポン絶望工場」という新書を再びご紹介。安倍政権の移民政策は、現状の留学生や実習生の抱える諸問題を放置したまま、新たな海外からの労働者を受け入れようとするもの。

まさか、竹中平蔵がまたピンハネしようとたくらんだ新手の移民政策ではないだろうが、最賃以下でこき使われるなどころか、賃金不払いまで起きている現状がある。(徴用工問題は現在にまで綿々と受け継がれているのだ。)

現在開会中の臨時国会でも取り上げられたが、失踪して行方知らずの実習生が6カ月で5千人近くに上るというのだから、日本全体がまるで暗黒街のような実態である。

本書は、それら現状をよく伝えている。

(以下再掲記事)

今日ご紹介の1冊は「ルポ ニッポン絶望工場」。著者は、他の著作タイトルでも社会派だろうと想像できる、出井康弘という1965年生まれのフリーのジャーナリスト。

扱われた素材は、東南アジア(ベトナム、フィリピンなど)やブラジルから日本にやってきた留学生や実習生。かれらは、公的にお墨付きを与えられて日本にやってくる。例えば留学生は、政府の「留学生30万人計画」に則って日本に来ることができる。

夢の国日本で一儲けしようと、留学生や実習生になってやってきた外国人労働者が、奴隷のようにこき使われ、タコ部屋のようなところに押し込められ、パスポートは取り上げられて奴隷のように収奪される実態が本書で取り上げられている。

挙句の果て、ピンハネ攻勢に抗うため、あるものは日本語学校から飛び出て、あるものは実習先から飛び出して、不法就労に従事する。ピンハネ雇用という奴隷制度に反発して、逃亡を試みる。そして、母国に帰る者もいれば、それもかなわなくて犯罪者に堕ちていく。

本書には、マスメディアが書かない官民によるピンハネ構造社会ニッポンが明らかにされている。夢を持ってやってきた若者たちを騙してこき使ってピンハネするのは、ブラックな使用人だけでなく、その使用人を監視するために天下り先の団体を作る官僚たちでもあるのだ。

また、人手が足りない介護や看護の担い手を、外国人に委ねようとする仕組みは、縦割り行政の弊害による、難解な国家試験やさまざまな規制によってほぼ崩壊寸前なのである。誰でも知っている例で言えば、優しくて優秀なフィリピンの介護士や看護師は、日本での就業をあきらめている。カナダはすでに多くのフィリピン人を受け入れているし、日本と同じく人手不足のドイツは、ハードルを低くしてフィリピンの看護師や介護士を多く受け入れ始めたという。

日本も少子高齢化が始まったというのに、国ぐるみでブラック企業体質な日本はどうなっていくのだろうかと改めて強く感じさせられた1冊だった。全くこの国はどこをどう切り取っても、「これからどこに向かうの?」としか書いてない。