将棋の2日制のタイトルマッチも同じことを行うが、囲碁でも将棋でもこのセレモニーを見るたびに鳥頭の私は、彼らは別世界の人間だと思ってしまう。
で、今朝の並べ直しで挑戦者の張栩(ちょう う)九段が置くところを間違える珍しいシーンがあった。別に反則でも何でもないのだが、それとなく軽く井山に促されて恥ずかしそうなしぐさの張栩がなかなかチャーミングである。(以下の動画20秒)
その時の井山は対戦後自室で涙したそうだが、壁のような張栩の存在感を実感したという。そして翌年、井山は再び挑戦者となって大きな張栩という壁を乗り越えて20歳の史上最年少の名人になった。19歳の涙の試練を乗り越えて、井山は大きく成長したと自著で述懐している。
張栩は、いまだに近寄りがたい精悍な感じの風貌と、鋭敏な棋風の実力者だが、今朝の並べ直しを間違えた時の恥ずかしがりようがなんとも人間的で麗しいところである。
挑戦者になるだけでも大変なビッグタイトルに、10年越しで登場するだけでもすごいのに、この第4局は前半押し気味だった。2勝2敗のタイに持ち込むチャンスはあったのだが、張栩としては残念な敗局だった。
井山は七冠を独占していたが、碁聖(ごせい)戦で台湾出身の20歳の許家元に敗れ、六冠に後退してしまった。自身が張栩を破って台頭してきた逆バージョンになっていくのか。この後、王座戦(10月から5番勝負)で一力遼(21)と、天元戦(10月から5番勝負)で山下敬吾(40)とのタイトル戦が待っている。
がんばれ井山。
4 加藤正夫 31 (故人)
5 張栩 23 (ちょう う、台湾出身)
6 坂田栄男 21 (故人)
9 藤沢秀行 14 (故人)