遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

おっと間違えた、第43期囲碁名人戦

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きょうは囲碁名人戦七番勝負の第4局があり、井山名人(29)が勝利しこのシリーズの対戦成績を3勝1敗とした。(上の画像は、局後の検討シーン。)

名人・本因坊棋聖の3大ビッグタイトルマッチは、全国各地の名旅館などで2日間にわたって対戦が行われ、2日目の朝は、前日に終わったところまで対戦両者が碁石を並べ直すセレモニーがある。

将棋の2日制のタイトルマッチも同じことを行うが、囲碁でも将棋でもこのセレモニーを見るたびに鳥頭の私は、彼らは別世界の人間だと思ってしまう。

で、今朝の並べ直しで挑戦者の張栩(ちょう う)九段が置くところを間違える珍しいシーンがあった。別に反則でも何でもないのだが、それとなく軽く井山に促されて恥ずかしそうなしぐさの張栩がなかなかチャーミングである。(以下の動画20秒)

張栩九段打ち間違える【第43期囲碁名人戦七番勝負・第4局】

張栩は台湾出身の38歳の棋士で、日本でプロになるために10歳で来日し、通算の七大タイトル獲得数が23期という日本囲碁界のスーパースターである。

10年前、井山は19歳で第33期名人戦に初挑戦した。その対戦相手が当時28歳の名人張栩で、井山は2勝0敗とリードしながらも結局3勝4敗となって初挑戦を敗退した。

その時の井山は対戦後自室で涙したそうだが、壁のような張栩の存在感を実感したという。そして翌年、井山は再び挑戦者となって大きな張栩という壁を乗り越えて20歳の史上最年少の名人になった。19歳の涙の試練を乗り越えて、井山は大きく成長したと自著で述懐している。

二人の名人戦対決は、その時以来の対決となる。張栩は、一時は五冠を独占していた時期があったが、井山の登場と台頭で今は無冠となっている。

張栩は、いまだに近寄りがたい精悍な感じの風貌と、鋭敏な棋風の実力者だが、今朝の並べ直しを間違えた時の恥ずかしがりようがなんとも人間的で麗しいところである。

挑戦者になるだけでも大変なビッグタイトルに、10年越しで登場するだけでもすごいのに、この第4局は前半押し気味だった。2勝2敗のタイに持ち込むチャンスはあったのだが、張栩としては残念な敗局だった。

井山は七冠を独占していたが、碁聖(ごせい)戦で台湾出身の20歳の許家元に敗れ、六冠に後退してしまった。自身が張栩を破って台頭してきた逆バージョンになっていくのか。この後、王座戦(10月から5番勝負)で一力遼(21)と、天元戦(10月から5番勝負)で山下敬吾(40)とのタイトル戦が待っている。

がんばれ井山。

国内囲碁七大タイトル獲得数ランキング(故人以外は現役棋士
1 趙治勲 42 (ちょう ちくん、韓国出身)
2 井山裕太 41 (東大阪市出身)
3 小林光一 35 (旭川市出身、長女小林泉美張栩の妻)
4 加藤正夫 31 (故人)
5 張栩  23 (ちょう う、台湾出身)
6 坂田栄男 21 (故人)
6 林海峰 21 (りん かいほう、上海出身、張栩の師匠)
7  大竹英雄 17 (北九州市出身)
9 藤沢秀行 14 (故人)
9 山下敬吾 14 (旭川市出身)