遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

「西洋美術史」/木村泰司

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世界のビジネスエリートが身につける教養「西洋美術史」 木村 泰司  (著)  ダイヤモンド社


ビジネスエリートでもない私が本書を手に取ったのは、美術史と縁遠いからであったが、「まえがき」を読んだ時点で「これで、お勉強しましょう」と言われているようで少しあとずさり。

気を取り直して、ギリシア美術から現代美術まで、2500年の美術史をたった250頁で踏破した。

「まえがき」で躊躇して積読扱いにしなくてよかった。美術好きで内外の美術館にも少なからず足を運んでいるが、学生時代に勉強したはずの西洋史など体内にほとんど残っていない我が身には良い充電機会だった。

印象派以降の現代美術の頁数は、いささか少なすぎるが、ギリシャから印象派までの2400年余りはよい流れで扱われていた。ヨーロッパの権力者・王室と宗教と密接にリンクした美術の歴史が、お馴染みの画家と名画とともにうまくまとめられていて、難しくないお勉強の時間だった。

巻頭のカラー年表だけ取り外して自分でチョコっと書き込みして携行していれば、商談の「箸休め話」時に役立つかもしれないのでお勧めする。(日本の美術については他をあたっていただきたい。)そして、本書で美術に興味を持ち、出張で世界や日本の各地に行った時に少しでも時間を見つけて現地の美術館に足を運ばれることをお勧めする。(それが可能なお方は、うらやましい。)

本書の趣旨と少しずれるが、美術の鑑賞の仕方に決まりはないので、とにかく本物と接するだけで教養のようなものが身に付くと思う。専門家はそうはいかないが、素人は、鑑賞経験と感性でいいと思う、それこそ教養だと思う。

カラー頁は、年表だけであとはモノクロ。本文には小さく印刷されたモノクロ印刷の名画が掲載されていて、しかもその数もさほど多くはない。本書は話題にもなりよく売れた一冊のようだが、いっそのこと新書(ダイヤモンド社だから可能だったはず)にすれば、もっと多くの人を楽しませることができたのに残念なことである。