オペレーションZ 真山 仁 (著) 新潮社
OZのミッションは、国の借金1000兆円を削減することで、さしあたり、単年度の財政支出を半分に抑える方策を構築し、リーダである首相がそれを実践しようとする近未来小説。
本書は架空の小説ではあるが、限りなく事実に基づいた小説で、国の借金や歳出歳入などは、現在の日本国そのものを描いている。
OZは総理の命令で、単年度の歳出(予算)100兆円を50兆円減らすことだけを考えろと命じられる。歳入(税収)を考えるプロジェクトは別に編成されているので、OZは歳出の面だけのオペレーションを命じられる。
100兆円の歳出の内訳は、社会保障関係費33兆円と地方交付税交付金16兆円が約半分を占め、公共事業費6兆、防衛費5兆、国家公務員給与5兆、国債費(償還費用・利払費)24兆円などがその他の歳出となっている。
これらのうち50兆円を減らすとなると、国債費24兆円には手を付けられないので、社会保障関係費33兆円と地方交付税交付金16兆円をゼロにしなければならない。この「暴動級」の単年度歳出削減50兆円を実践しないと、累積債務1000兆円は減っていかないし日本の未来はないのである。
この辺りを読んでいると、ことの本質を以前から理解して問題意識を持っている人間ですら、動悸がして脂汗が出てくると思う。
オペレーションZは、歳出をZEROにするオペレーションでもあろう。
真山仁(代表作「ハゲタカ」)がどんな作家は知らないが、「このまま放置していたら大変なことになりますよ」と、日本の財政の危機的状態を描いていて、実際に危機になればどのようなことに立ち至るかを小説仕立てにすこぶる面白い読み物にして分かりやすく教えてくれる。
何としてでも1000兆円の国の借金を減らさなければならないという総論は、私も賛成。
そのためには、ありとあらゆる税率を引き上げるほか、独身税のような新税を導入して税収入をさらに増やす。そして、歳出は例外なく減らして、自治体も企業も公人も私人も、国のすべてが拷問のような試練を耐え忍ばなければならないのである。
過去の政治の無策がこのような実態を引き起こしたのであるが、有権者の私たちも連帯責任を負うことになるのである。その拷問の期間がいつまで続くかは明らかにされないが、早期に始めなければ拷問の前に国が亡びるということに気づかなければならない。
したがって、総論賛成、各論賛成(汗)という結論になってしまうのである。しかしこのオペレーションを受け入れる日本国民が過半数を超えるのは、あと1000年くらい必要な気もする。その頃日本は、中国の瑞穂省かなんかになっているような気がする。
なぜなら、アルファベットの“Z”の次は存在しないのである。