私は7年ぶり2回目の本作とのご対面である。本展覧会の作品とはもう何回も会うことはないと思う。まさに「芸術は長く人生は短し」である。
「松林図」は、ご覧の通り、六双の屏風のほとんどが空白のままである。何が見えるかは、あなた次第というわけか。なるほど、「霧のなかの静かな松林」や「雪の朝の松林海岸風景」に見えなくもない。
大徳寺は、禅寺です。住職は、「修行の寺に襖絵は無用」とその頼みを断りました。
それが、今も大徳寺に残る「山水図襖絵」です。
このエピソードは等伯のデビュー時のことで、筆一本で「頼もう」と道場破りなのである。
そういう激しい経験をして、こういう「松林図」が描けるようになるのである。未完成と言われようがなんだろうが、好きなように描く。
「印象派」はフランスより早くここに生まれたような気がする。