遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

灘校校長忍び寄るファシズムに警鐘を鳴らす

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昨日は、灘高の3年生が加計問題の真の下手人は誰かという推理をご紹介したが、今日はその灘校(中学・高校)の和田孫博校長の手記をご紹介する。
 
謂れのない圧力の中で  ~ある教科書の選定について~和田孫博
buff.ly/2vrR7HV 
 
灘中学校では、歴史教科書を「学び舎」による『ともに学ぶ人間の歴史』の採用を決定したという。そうしたら学校に、自民党衆議院議員兵庫県会議員から「なぜあの教科書を採用したのか」という問い合わせがあったり、匿名やOBと名乗る人間などからその教科書採用に関する抗議のはがきが続々と届くようになったという。
 
抗議のはがきには、「「学び舎」の教科書は「反日極左」の教科書だ。日本のエリートを育てる灘校がなぜこれを採用したのか。こんな教科書で学んだ生徒が将来日本の指導層になるのを黙って見過ごせない。即刻採用を中止せよと」などと書かれていて、その文章はほぼどれも同じものだという。
 
灘校は、この教科書は詰め込み式の受験用の教科書と違って「アクティブ・ラーニング」に向いているとしてる。この教科書は、麻布や慶応などの有名中高一貫校でも採択されたようで、高校合格のための教科書とは一線を画していて、学習者が主体的に問題を発見し、思考し、他の学習者と協働してより深い学習に達することを目指す「アクティブ・ラーニング」に適った優れた教科書だと和田校長は記述している。
 
私はそういう教科書で深い学習をすれば、自分の頭で考えることのできる未来の日本の指導者が育つと考える方が自然で、著名な学校がその教科書を採用したことに納得できる。
 
また、和田校長は、学校への抗議活動の中心に水間政憲日本会議がいて、「育鵬社」の教科書を採用しなかった学校への抗議運動を展開していると明言している。
 
手記は最後に、保坂正康の『昭和史のかたち 』(岩波新書)の主張を採用して、ファシズムの権力構造は四辺からなる「正方形」の枠内に国民を閉じ込めようとし、いまの日本でもそのことが当てはまると指摘する。今の日本の四辺の正方形は、以下のようだと和田校長は明言し警鐘を鳴らす。
 
第一辺については、政府による新聞やテレビ放送への圧力 が 顕在的な問題となっている。
第二辺については 、 政治主導の教育改革が強引に進められている中 、今回のように学校教育に対して有形無形の圧力がかかっている。
第三辺については、安保法制に関する憲法の拡大解釈が行われるとともに緊急事態法という治安維持法にも似た法律が取り沙汰されている。
第四辺に関しては流石に官民挙げてとまではいかないだろうが、ヘイトスピーチを振りかざす民間団体が幅を利かせている。そして日本会議との関係が深い水間氏のブログからはこれらの団体との近さがにじみ出ている。」
 
和田校長は、この手記で見る限り、まさに今を生きる歩く歴史教科書のような立派なお方で、こういう校長先生あっての灘校かと感心する。多くの善男善女に読んでほしい、素晴らしい手記である。