書道の大御所三跡(さんせき)の一人、小野道風(おののみちかぜ「トウフウ」894-967)の書のご紹介。
道風といえば、花札の「雨」の人物として有名である。あの札は「柳」を表す札だが、柳に飛びついたカエルを見て、道風が書のスランプから脱したという謂れに基づいた図柄である。
道風は、王義之の書を学び、存命中から「王義之の生まれ変わり」とまで言われた天才である。私も彼の作品を初めて目にして、「すごいなあ」とその才能を改めて感じていた。
その作品は「三体白氏詩巻」(国宝 正木美術館蔵:大阪府忠岡町)で、白居易の詩集「白氏文集」の中から6首を選び筆にしたもの。三体とは、楷書、行書、草書、三つの書体のことで、道風の楷書が残されているのはこの作品だけだという。
画像は「三体白氏詩巻」の一部分で、右半分は、その楷書で書かれたものである。
道端でカエルを見なかったらこの作品は残せなかったのだろうか、千年を生きた素晴らしい揮毫(きごう 書)である。