上の写真を見たとき、すぐには意味が分からなかった。
赤ちゃんたちだけが、飛行機に乗っている写真だということはわかったのだが、それが何の意味かよく分からなかった。親はまとまって別のゾーンにいるのか、到着空港に先回りしているのかな・・・・。などと推理した。
以下の英文のキャプションを見てようやく理解した。
Operation Babylift, 1975. Over 3300 Vietnamese orphans evacuated by air to the United States and other countries.
この赤ちゃんたちは、ベトナム戦争で孤児となった赤ちゃんだった。1975年の戦争末期に、3300人を超える孤児たちは「ベビーリフト作戦」で米国やその他の国へ渡っていったのだ。
満州から、命からがら逃げだしてきた民間人には、中国人にわが子を預けて帰国してきた人が少なくなかった。家族のための食糧と乳呑み児を交換した人たちもいた。それらの引揚者の怒りは、宝田明のように今も治まることはない。
ベトナム戦争が終結し、敗戦国となったアメリカは、それでも3300人を超すベトナム孤児を輸送機に乗せた。この「ベビーリフト作戦」は、集団誘拐ではなかったかという歴史認識もあるようだが、いま40歳台になっている孤児たちはどう思っているだろうか。少なくとも、なりふり構わず逃げ出した関東軍のヘタレ作戦よりは、高貴な作戦だったと思う。
わが国の政府高官や軍部は、民間人のことなど何も気に留めていない。むしろ足手まといと思っているこの体質は、今の日本もまったく同じことだ。安保法制は、むしろ国民に銃口を突きつけるための脅しのようなものだ。
あの関東軍に代表される腐った精神は、皮肉にも朽ちることなく政府高官や特権階層の胸に宿ったままである。その意味で戦後は終わっていない。
そのことにそろそろ気づいてきただろうか、美しい民間人たちよ。