遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

追悼・水木しげる

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水木しげるさんが亡くなられた。

私は水木さんのそんなに良い読者ではなかったかもしれないが、8年前に「総員玉砕せよ!」という彼の戦争体験と反戦の思いを描いた著書をブログ記事にした。コミックなのでユーモアで味付けられてはいるが、戦争(水木さんの実体験)の不条理さを痛烈に批判している。戦争は負けたが、戦後の莫迦な日本の国造りの精神は、その不条理さから脱却できていないと気付かされる。

総員玉砕せよ! /水木しげる


小池一夫ツイッターで追悼している。 @koikekazuo  
水木しげる先生が亡くなられた。なんだか、ぽっかりと胸に穴が開いたような気持がする。しかし、作品をはじめ、この世に遺されたものは計り知れないほど多い。ご冥福をお祈りいたします。僕は、水木先生の「幸福の七か条」を読むたび身を引き締める。

水木さんのその「幸福の七カ条」を以下紹介する。
第一条
成功や栄誉や勝ち負けを目的に、ことを行ってはいけない。
第二条
しないではいられないことをし続けなさい。
第三条
他人との比較ではない、あくまで自分の楽しさを追及すべし。
第四条
好きの力を信じる。
第五条
才能と収入は別、努力は人を裏切ると心得よ。
第六条
怠け者になりなさい。
第七条
目に見えない世界を信じる。

私の座右の書ショーペンハウアーの「幸福について」と共通する部分ばかりだ。

七か条の前半は、自分の好きなことをリターン抜きで楽しめば、幸せになると言いたいのだろう。
第五条は、努力しても必ずしも報われるとは限らないことを知っていれば不幸は訪れないと言っている。
また第六条もそれに似ていて、努力してばかりでは幸せにならないから、適当に怠けなさいという。
第七条は想像世界は誰にもじゃまされない愉しい世界なんだと、言いたいのだ。

確かにこの七条で人は幸せになれると思う。名言である。ただし、その実践には努力か勇気が要る。

はじめて水木さんの顔を見て声を聞いたのは、30年以上前だろうか、NHKのインタビューか何かだった。
そのときの彼は、戦争で片腕を失ってなお、表情が柔らかくて話が面白くて声に希望がみなぎっている初老の男だった。もう「幸福の七カ条」を実践されていたのだろうか。

謹んでご冥福をお祈りする。合掌。