遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

針の眼/リチャード・マーカンド

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針の眼  Eye of the Needle
出演者 ドナルド・サザーランド、ケイト・ネリガン
日本公開 1981年10月  上映時間 112分


イギリス映画「針の眼」をテレビ録画で鑑賞。これは1981年の映画で、公開当時からこの作品のことは意識していた。ケン・フォレットの原作もことのほか有名だったので、原作を読んでから映画を観ようと当時からずっと思っていた。それから30余年、ついに原作は読まないまま映画を鑑賞してしまった。

少し話がそれるが、中学生のころから映画館で年に何回か親友たちと映画を観ていた私が、高校生になって初めて一人でいった映画がロバート・アルトマンの「M★A★S★H マッシュ」(1970年)だった。その映画の主演がドナルド・サザーランドだった。映画は朝鮮戦争時の米軍を舞台にした大人の喜劇で、徹底的に軍隊を揶揄しベトナム戦争をも揶揄したアルトマンの初期の代表作である。 その「マッシュ」の主演のサザーランドとは、そんな強烈な出会いがあった。その後少なからず彼の出演映画(「戦略大作戦」「ジョニーは戦場に行った」「普通の人々」「バックドラフト」など)と接して来たわが人生であった。

「針の眼」でのサザーランドの役柄は、在イギリスのナチのスパイ。連合軍がヨーロッパ大陸に上陸してきそうだという中、それはどこに上陸しようとしているのかをイギリスで偵察してドイツ軍に知らせるのが彼の職務。
優秀な彼は、それはカレーではなくノルマンディだということを突き止め、Uボートでイギリスを脱出するため盗んだボートで嵐の海に出て行く。

彼のスパイとしての報告(敵はノルマンディ上陸を目論んでいます)が、無事ドイツに届いたとしたら史実に反する映画になるので、最初からネタバレ映画なのではあるが、それでもスリリングなシーンが満載でどきどきする。ケン・フォレットの原作の緊迫感を、監督のリチャード・マーカンドが的確に描写できているからなのだろうと思う。
マーカンドは、この作品を見たジョージ・ルーカスに認められ、「スター・ウォーズ エピソード6/ジェダイの帰還」の監督に抜擢されたという。

悲しい運命に翻弄される美しい人妻ケイト・ネリガンとサザーランドのゆきずりの恋は、原作ではどれくらいのボリュームでどう描かれているのだろう。映画では二人の深い心理描写までは、及んでいなかった。特にサザーランドの心理描写が少し淡白なままだった。二人に愛はあったのだろうか。原作を読んで確かめてみる手もあるなと思った次第である。