遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

海の上のピアニスト/ジュゼッペ・トルナトーレ

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海の上のピアニスト THE LEGEND OF 1900

出演者 ティム・ロス、プルイット・テイラー・ヴィンス
日本公開 1999年12月18日、上映時間  125分

時は1900年。欧州とアメリカを年数回往復する定期航路を持つ豪華客船には、欧米の裕福な旅行客とヨーロッパからの貧しいアメリカ移民の人たちが乗り合わせる。ある日、船のピアノの上の木箱に、生まれたばかりの赤ん坊が捨て置かれているのを、客船で働く貧しい船員が見つける。赤ん坊は父親代わりになるその船員に、生まれた年にちなんで「1900」と名付けられ、一歩も外に出ることなく船の機関室の中で育てられる。

育ての親である船員は、ある時不慮の事故で命を落とす。その葬儀が船の甲板で行われ、8歳の「1900」は葬送曲を耳にして、あの音は何だろうといぶかる。葬儀に出席していた日本人女性が日本語であれは「オンガク」だと教えてやる、英語で「music」だともつけ加えてやる。

その後、音楽に魅力を発見した「1900」は規則を破って機械室を出て、夜な夜なパーティーが開かれる大広間のピアノに興味を抱き始める。自分が捨て置かれていたピアノにである。そして、またたくまにピアノの天才奏者として、船の中のピアニストとして育っていく。自分で作曲をした音楽を演奏したり即興演奏を難なくこなして聴衆を楽しませる「1900」の麗しい人生を描いた、心温まる映画である。

豪華客船が嵐に遭い大いに揺れるなか、固定ストッパーを外してピアノを揺れにまかせてダンスフロアで躍らせるシーンは、映画ならではの楽しいシーンで印象的だった。また、エンニオ・モリコーネ(86歳にしていまだ現役)がシーンごとに愉しいピアノ音楽を供給してくれていて、とても素晴らしかった。
それから、主演のティム・ロスのピアノ演奏の演技(実際には弾いていない)は、モリコーネのこの映画のための多くの作品ととてもよくシンクロしていて秀逸だった。とてもよくできました◎、である。

映画の途中で、これはまるで「ニュー・シネマ・パラダイス」的世界だなと思っていたら、後で調べたら同じ監督の作品だった。音楽担当も同じモリコーネだった。音楽のテイストも、よく似た感じを醸し出していたのだと思う。

製作費が900万ドルと、低予算だからか、美術や特撮がまずい。冒頭の大事なシーンの自由の女神や、後半のクライマックスのNYの街のCGの下手さがひどい。ミケランジェロダヴィンチを生んだお国の作品だと思えないほどのまずさ。それが理由だからか、ジャズをコケにしたせいか、アメリカでの興行収入は26万ドルと振るわなかった。ただし日本では16億円(ざっと1600万ドル)の収入。確かにこの手の作品は日本人は大好物であるし、もともとイタリア映画と日本人は相性が良いとも思う。

私は、「ニュー・シネマ・パラダイス」の方がはるかに好きだが、この作品はファンタジーとして楽しんだ。それにしても、昔からの作品でもそう思っていたが、イタリア映画の少年たちは可愛いくて微笑ましい。