遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

石手寺と道後温泉本館/松山散歩2日目

今回、「松山地方祭り」と偶然日が合い、旅の2日目は5時過ぎに起きて、旅館の仲居さんに教えてもらった近くの神社の神輿の宮出しを見に行く。勇壮な6基の神輿とその神輿町の大勢の男たちが、長い長い石段を下りてくる。エキサイティングな経験だった。

その後、朝食までの2時間散歩。

イメージ 1

まずは、四国八十八箇所の51番目の札所石手寺(いしてじ)に徒歩で向かう。

お遍路さんや観光客はごくわずかの早朝の石手寺。国宝の山門や重文の本堂などが荘厳だった。国宝の山門前の「集団的自衛権は不用」の立て看板と、一人で境内に立って読経をする男性が印象的で、朝の名刹はとても清らかだった。

「身の上や 御籤(みくじ)を引けば 秋の風」 正岡子規
これは、明治28年(1895年)、夏目漱石と同居、療養中の子規が、石手寺を散策(吟行)した時の句。その際に拾ったおみくじは「凶 病は長引く也」とあったという。「我身にひしひしとあたりたるも不思議なり」と子規は「散策集」に感慨を記しているという。その句碑が境内にひっそりと立っていた。


イメージ 2

その後、温泉街にとって返し、道後のシンボル「道後温泉本館」を外から見学。松山中学の英語教師時代、夏目漱石が頻繁に通ったこの公衆浴場は、「坊ちゃん」で主人公が泳いだことから「坊ちゃん湯」とも称される。「千と千尋の神隠し」の「油屋」のモデルとしてもつとに有名である。この3層の建物の竣工は明治27年(1894年)で、今年がちょうど120年の節目にあたるという。

朝湯を愉しむご婦人方のエコーのかかった声が、よしず越しに建物の外にまで漏れ聞こえてきて、静かな朝に心地よい響きであった。私はその後宿で朝湯を愉しんだ。

宿泊した旅館は、道後一の老舗旅館「ふなや」。その宿のいちばん安い宿泊プランであったが、食事もサービスも部屋も大浴場も、とても満足できるものだった。

チェックアウト後も、しばらく道後散策をして、追加の土産を買って、松山から金刀比羅に向かった。