遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

ドニー・ダーコ/リチャード・ケリー

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ドニー・ダーコ Donnie Darko
製作 アダム・フィールズ、ショーン・マッキトリック
製作総指揮 ドリュー・バリモア、ナンシー・ジュヴォネン
出演者 ジェイク・ジレンホール、ジェナ・マローン
音楽 マイケル・アンドリュース
日本公開 2001年8月31日
上映時間 113分

「2000年代を代表する映画25本」から、今回鑑賞は「ドニー・ダーコ」(2001)。

主人公はハイスクールに通う精神を少し病んでいる男子で、その名をドニー・ダーコという。変な作品タイトルは、主人公の名前に由来する。映画のストーリもタイトルと同じく不可解なもので、ドニー・ダーコの夢か幻覚のような映像とエピソードを組み合わせたものである。

ある日、ドニーは化け物のようなウサギに「Xデー」までのカウントダウンの日時間を教えられる。そのXデーが何なのか何が起きるのかは観客にはわからない。

物語はそのXデーまでのダーコの学園生活、キュートな転校生や科学の教師や文学を教える反体制女性教師(あの「E.T]のドリュー・バリモア)との心の交流、バカで粗野な同級生とのいざこざ、校長には認められているがまったく頓珍漢な道徳を教える女教師との小さな対立、まことしやかなことを言う心理学教師の私生活での秘密の暴露などが、淡々と描かれている。
また、ほんわかした両親を中心としたダーコ一家の生活や、精神科医(キャサリン・ロス!)との治療風景が描かれている。

ドニー・ダーコだけに見えるウサギの存在が神秘的で(その姿形は不気味で実に印象的)、ウサギが登場するシーンは主人公の幻覚のような精神世界で、その世界の中でドニーは自由に動き回る。ウサギは常にXデーの残り時間を通告し(「不思議の国のアリス」の時計を持ったウサギを連想してしまう)、ドニーはそれにそそのかされるように自由に動き回るのである。

どれが現実でどれが精神世界なのかはよくは判らないし、タイムトラベルの概念が登場するので、時制についても入り組んでいてよく分からないところがある。でも2000年代の映画はそんなことはどうでもよく、ドニーの自由な発想から導かれる一つ一つのエピソードは面白くて心温まる。

映画という手法を用いて初めて可能になる表現がここにある。