遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

シティ・オブ・ゴッド/フェルナンド・メイレレス

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脚本 ブラウリオ・マントヴァーニ
原作 パウロ・リンス
音楽 アントニオ・ピント、エド・コルテス
日本公開 2003年6月28日
上映時間 130分


「2000年代を代表する映画25本」から、さっそく「シティ・オブ・ゴッド」(2003)を選んでDVD鑑賞。監督は後に「ナイロビの蜂」を監督したフェルナンド・メイレレス。「ナイロビの蜂」を見たばかりだったので続けてメイレレスの作品を鑑賞。

映画の舞台は、1960年代から70年代にかけてのブラジルはリオデジャネイロのスラム街。
シティ・オブ・ゴッド=神の街」と呼ばれるその真新しい同じ形の家々が建ち並ぶスラム街は、ナイロビのおびただしいトタン屋根の家並みに比べれば、秩序が保たれているように見える。しかし、そこに住む人たちの未来は何も保証されておらず、未来のない貧しい子どもたちは、徒党を組んで武器を手に自分たちの未来を切り開いていく。

こういった題材は、これまでにも見かけは違えど映画では星の数ほど存在した。
ゼロ年代の監督は、オーディションで集めた素人の少年や青年たち、総勢200人ほどに演技をつけて、パワフルな映画を作り上げた。全てにおいて混沌としているイメージの作品だが、その舞台裏を見てみると周到に練られて統制されていることが容易に想像できる。

未来のない若者たちにペンと辞書を持たせ、教育を施して立身出世させる映画を作っても一作だが、実話に基づいた原作をもとに製作されたこの映画は、リオの若者たちに銃とドラッグを持たせた。ムンバイなら「スラムドッグ&ミリオネア」のようにクイズ番組で立身出世も可能だったろうに残念なことだ。

銃を持たせたあとは、「ウェストサイド物語」のように徒党を組ませて、「ゴッド・ファーザー」のように抗争させれば、130分もの作品を完成できるのである。

カメラワークと編集は秀逸で、主人公たちの少年期から青年期までの成長過程と抗争履歴をスリリングにリズミカルに再現する。そのリズム感は、サンバにとてもよくマッチする。
映画とはどういうものかがよく分かっているスタッフの力が結集できた逸品である。

リオでは、今年はサッカーのワールドカップが、2016年にはオリンピックが開催される。リオのスラム街がその後どうなのかは知らないが、戦後間もない世界の大都市のスラム街は、徒党と抗争の繰り返しだったのだろう。間違いなく私たちの過去がそこにある。

少年や青年たちの手に何が在るのかないのか知らないが、今もそういう世界が地球上の其処此処に存在すると思われる。
おだやかで平和そうな見かけに騙されてはいけないのである。