遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

谷川浩二と里見香奈

谷川永世名人がA級陥落 連続32期で途絶える

このニュースの見出しは何を伝えているのだろうか。

「谷川」は、谷川浩二のことで、今は日本将棋連盟会長、年齢は51歳。将棋は四段に昇進すると晴れてプロ棋士になれるのだが、谷川は中学2年でプロ棋士になった。中学生プロは、当時では史上二人目の快挙であった。
そして谷川は21歳で名人位を獲得した。

1937年(昭和12年)に実力制名人(その前は名誉名人)になって以来、名人になった棋士
の12人。

永世名人」は、名人位を5期(1期は1年)以上獲得した棋士に与えられる称号。永世名人は次の6人。
十四世名人 木村義雄(8期)
十五世名人 大山康晴(18期)
十六世名人 中原誠 (15期)
十七世名人 谷川浩司(5期)
十八世名人 森内俊之(8期)
十九世名人 羽生善治(7期)

将棋の名人になるチャンスは、1年に1回。現名人と次の名人を争う挑戦者は、「A級」というランクにいる棋士で1年を通してリーグ戦が行われ決定される。A級にいる棋士は10人で、谷川浩二は19歳から32年間連続でA級に在位していたのだが、今年度のリーグ戦でA級を陥落することになった。A級の10人のうち、年間のリーグ戦9戦の成績の悪かった下位2人がB1組というクラスに陥落し、逆にB1組の上位2人が花のA級に上がってくるのである。(サッカーのJ1、J2の関係に似ている)

これが、「谷川永世名人がA級陥落 連続32期で途絶える」というニュースの解説である。谷川は19歳でA級入りして以来32年間連続して頂点のクラスに居続けたのだった。

A級以下のクラスと棋士の数は以下の通りで、プロ棋士は約160人ほど存在していて、そのほぼ全棋士がこの「順位戦」というどこかのクラスに入って頂点の名人を目指している。
名人1人
A級10人
B級1組13人
B級2組25人
C級1組34人
C級2組46人
合計129人

その他、フリークラス33人(順位戦から引退宣言した棋士とC級2組から陥落した棋士のクラス)

このピラミッドの頂点に立つことは、大変なことだが、いちばん下位クラスのC級2組に入りプロ棋士としてデビューすることもまた至難のわざなのである。


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将棋の歴史が始まって以来、このピラミッドの中に女性は一人も存在していない。ところが、四段のプロを目指す奨励会三段に、このたび女子が仲間入りした。里見香奈という出雲出身の天才女流棋士が、奨励会に入会した。これは並み居る天才少年たちがいる「棋士の卵」の最高峰にたどり着いたということである。

里見はすでに女流棋士を生業(なりわい)としていて、女流タイトルも総なめにしているすごく強い棋士なのだが、天才少年たちに交じって奨励会三段に上がったというのは男女の別を抜きにしてもすごいことである。

里見香奈(21歳)は、4月から始まる第55回奨励会三段リーグに、女性として初めて参加し四段(プロ棋士)を目指すこととなる。ガンバレ里見。