遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

サンセット大通り/ビリー・ワイルダー

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サンセット大通り Sunset Boulevard
 
監督::ビリー・ワイルダー
脚本::ビリー・ワイルダーチャールズ・ブラケット、 D・M・マーシュマン・Jr
出演者:グロリア・スワンソンウィリアム・ホールデン
ナンシー・オルソン、エリッヒ・フォン・シュトロハイムセシル・B・デミル
配給:パラマウント
製作:1950年 日本公開:1951年10月5日
上映時間:110分

ビリー・ワイルダーの代表作なのにまだ観たことのない作品だった。NHKの「ハリウッド白熱教室」の「脚本 人生をストーリーにする」でこの作品が取り上げられ、冒頭のシーンが紹介された。
そのシーンだけで、この映画を観たい!と思い、DVDをレンタルした。
 
ハリウッドは白昼のサンセット大通りを、パトカーと白バイがサイレンを鳴らして走り来る。隊列の終点は、とある邸宅の玄関前。警察官の視線の先には邸宅のプールに浮かぶ男の死体が一つ。
 
サンセット大通り」はこんなシーンから始まる。
 
邸宅の持ち主は、グロリア・スワンソンが演じる無声映画の元大女優ノーマ・デズモンド。年齢は50歳で、スワンソンも同じ年齢。
そのプールに浮いている死体が、売れない脚本家ジョー・ギリス。まだパッとしない時代のウィリアム・ホールデンが演じている。
 
死体でプールに浮いているにも関わらず、ジョーのナレーションで物語は時をさかのぼり進行していく。
物語の終焉がばれてしまうのに、時系列に物語をかたらないことで、効果的にサスペンスの要素が増幅される。
ハリウッド白熱教室」でそう教えてもらった、なるほどなるほど。
 
「なぜこの男はプールに浮くことになったのか」というのが、「サンセット大通り」のテーマとなるのである。その裏にある、ハリウッドの光と影が、実際のパラマウント映画の撮影所を舞台に描かれている。
 
「私は変わらず大スターよ、映画の方が小さくなっただけ」とノーマに言わせてしまった本作は、「イヴの総て」にアカデミー作品賞をさらわれてしまった。
作品賞や監督賞は取れなかったけれども、いろんなシーンやセリフが後世にまで語り継がれる名作だと実感できる。

ビリーワイルダーは、エリッヒ・フォン・シュトロハイムセシル・B・デミルの両監督を配役した。無声映画の大女優だったグロリア・スワンソンの主演映画を実際に監督した2人の巨匠を配役する贅沢。
シュトロハイムは、ノーマの主演作品を監督したこともある執事役。デミルは、ノーマが「私を主役に撮って」と頼みに行くデミル自身の役で出演している。
また、ノーマが自宅でカードをする無声映画時代の仲間のなかに、バスター・キートンがいることにはっとする。キートンのポーカー・フェイスに笑ってしまう。
 
そして、これまで鳴かず飛ばずだったウィリアム・ホールデンは、この作品でスポットライトを浴びることになり、3年後にワイルダーの「第十七捕虜収容所」で、アカデミー主演男優賞を受賞し一躍スターダムにのし上がるのであった。