遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

手袋を買いに/新美南吉

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2月に入って春のような暖かい日が続いていて、ゆったりと過ごす週末がありがたい。
初夏のような沖縄には、わが阪神タイガースが春季キャンプにはいっていて、
その一部始終をライブ放送で届けてくれるTVチャンネルがあり、これまたありがたい。
 
タイガースがただ練習している映像なんだけど、
今年は大阪桐蔭の藤浪が入団し、西岡と福留が大リーグから阪神入りし、
新外国人もやってきて、なんだかうきうきわくわくするキャンプ情報が届いてきて頼もしい。
 
少し遅めの朝食をとりながら、天声人語を読んでいて新美南吉の名前を目にする。
今年は南吉の生誕100年に当たるようで、えっまだ100年かと思っていたら、
没後70年と知り、29歳で夭折したことを初めて知る。
 
新美南吉の代表作「ごんぎつね」に触れたあとに、
《この短い一話が、どれほどの幼い心に、やさしさや哀(かな)しさをそっと沈めてきたか。
その広がりには大文豪もかなうまい。「ごん」に限らず、人生の初期に出会うすぐれた
読み物には、たましいの故郷のような懐かしさが消え去らない》
天声人語氏は言う。
 
そして、「手袋を買いに」の紹介に。
恥ずかしながら、私はこの小さな短い美しい物語を、今日初めてネットで読んだ。
そこには、いま読んでこその、深くて広がりのある世界を感じ取る。
 
雪の夜に、人が住む里に子ぎつねが手袋を買いに行く。
心配していた母ぎつねに、子ぎつねは、人間は優しくて手袋をちゃんと売ってくれたよと報告する。
それに応える母ぎつねの言葉でこの話は終わる。
 
「ほんとうに人間はいいものかしら。ほんとうに人間はいいものかしら」とつぶやきました。
 
「ごん」の悲しい最期や、「手袋を買いに」の「ほんとうに人間はいいものかしら」との問いかけ、
南吉は大きい問いを残して若くして逝ってしまった。
 
まだ寒い日が続く前の、早い春の陽差しのような「手袋を買いに」であった。