遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

ミシシッピー・バーニング/アラン・パーカー

イメージ 1

ミシシッピー・バーニング
Mississippi Burning
監督 アラン・パーカー
脚本 クリス・ジェロルモ
製作 フレデリック・ゾロ
ロバート・F・コールズベリー
出演者
ジーン・ハックマン
ウィレム・デフォー
ブラッド・ドゥーリフ
フランシス・マクドーマンド

日本公開 1989年3月4日
上映時間 128分


映画「ミシシッピー・バーニング」、ケーブルテレビにて鑑賞。

1964年10月、東京オリンピック開幕。開会式でアメリカ選手団はカウボーイハット姿で行進。
多くの黒人アスリートも行進していたのだが、カウボーイハットがなぜか似合う。
陸上100mのボブ・ヘイズという黒人ランナーが私の大のお気に入りで、早くて強くてカッコいい選手だった。

時は東京オリンピックと同じ1964年の初夏、ミシシッピー州公民権運動家3人が行方不明になる。
黒人有権者が全米で最も少ないミシシッピ州公民権運動の集中拠点とされ、
北部から募った学生ボランティア(白人600人、黒人200人)をミシシッピ州全体に散開させて、
黒人の選挙権登録を推進するという、「フリーダム・サマー」活動中に3人が行方不明になった。

当時のアメリカ南部は説明の必要もないほど、アングロ・サクソン以外には閉鎖的で、
この映画にも「アングロ・サクソン人以外は認めない」と演説する実業家が出てくる。
ボブ・ヘイズが東京オリンピックで活躍した当時のアメリカの舞台裏が、
アメリカの奥深い南部の田舎町が、この史実に基づいた映画「ミシシッピー・バーニング」で描かれている。

さて、その行方不明になった活動家3人(うち1人が黒人)の捜索のため派遣されてきたFBI捜査官を、
ジーン・ハックマン(「フレンチ・コネクション」「スケアクロウ」)と、
ウィレム・デフォー(「プラトーン」「スパイダーマン」)が演じる。

たたき上げ刑事(でか)風のマッチョな部下と、メガネをかけた大卒インテリ上司のふたりの捜査官、
ハックマンとデフォーのどちらがどちらを演じたかは、これまた説明の必要もないであろう。

彼らは軋轢を生じながらも、差別的な地元民の抵抗を振り払い、
怯える黒人たちの協力を得ながら、まっしぐらに行方不明の3人の捜索を進めていく。

事件の最も近くにいる最も疑わしい保安官補(ブラッド・ドゥーリフ)の妻を、
私の大好きな、あの「ファーゴ」のオスカー女優フランシスマクドーマンドが演じる。

マクドーマンドは、なぜあんな男と結婚したのかと、ふたりの捜査官に思わせるのだが、
南部から一度も外に出たことのない、あたたかい心をもった女性だからこそ、
そういう夫婦も成り立つのだと、レディーファーストの国らしからぬと妙に納得してしまう。

ともあれ、目覚めたその美しき心を持つ女性マクドーマンドの協力も得て、
おとり捜査のような反則ワザも交えながら、ハックマンとデフォーは事件を解決していく。

この映画が公開された頃から、私は子育てや生活に終われるようになり(たいしたこともなかったが)、
夫婦で映画館に足を運ぶことがなくなり、今回何気なく観た「ミシシッピー・バーニング」に、
なんでこんな名作を見逃していたのだろうと唖然としてしまった。
少しオーバーに言うと、歌舞伎好きだけど「勧進帳」は見てないなー、に近い感覚。

アラン・パーカー(「ミッドナイト・エクスプレス」)渾身のヒューマンドラマに、拍手を贈りたい。