遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

ナンシー関の小耳にはさもう

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ザ・ベリー・ベスト・オブ「ナンシー関の小耳にはさもう」100 (朝日文庫)

週刊朝日」の伝説的連載「小耳にはさもう」。ブラウン管のかなたに去ったあの人、今も活躍中のこの人に対する容赦なきコラムに、極め付きの一瞬を刻んだ消しゴム版画スペシャルバージョンでお送りします。呑逝した不世出のコラムニストの、これがベスト100。 

著者略歴
ナンシー関
1962年青森県生まれ。消しゴム版画家、コラムニスト。


「それでいいのか。後悔はしないのか」
というナンシーさんの言葉を、
いつも自分自身に言い聞かせているんです。
           宮部みゆき

オレ自身、ナンシーさんの悟りの境地のような
文章にグッときてましたから。物事をちゃんと客観的に
見られるから。ナンシーさんの文章は”いい得て妙”と
なっていたんでしょうね。心眼で物事を見る人だったから。
                 みうらじゅん

ナンシーさんは、どんな話しをしてもまんべんなくおもしろい。
コラムのおもしろい人は、話もおもしろいっていうのは
本当だな、って思っていました。女性でオレをあんなに
笑わせてくれたのは、ナンシーさんだけですね。
             リリー・フランキー

ナンシーさんの書くテレビ評論は、
(番組作りの)羅針盤のようなもので、
ボクがテレビ番組を作る時、半分は視聴者を意識して、
残りの半分はナンシーさんが
どう見てくれるのかということを意識していました。
     土屋敏男(日本テレビプロデューサー)


これらは、最新刊「評伝 ナンシー関 心に一人のナンシーを 」横田増生
に寄せられた帯に書かれた宣伝応援文章である。
ナンシー関の絶賛文章となっていて、この著作の応援になっているのだろうか。
そんな心配はどうでもよいことで、ナンシー関は、
その体だけでなく存在も偉大だったことが応援絶賛文章で再確認できる。

今日のご紹介は、本家の生コラム「ナンシー関の小耳にはさもう」である。
文庫になったセレクションで、この「ザ・ベリー・ベスト・オブ」は、
100のコラムが収められたずっしりとした文庫である。
もちろんコラムのすべてに、彼女作の消しゴム版画が添えられている。


私は人生の大半を、週刊朝日と歩んできたのだが、
ナンシーのこのコラム「小耳にはさもう」は、毎週楽しみにしていた。

もし私が有名人だったら、ナンシーに注目されたくない、スルーしてほしいと願うだろう。
私の言動を小耳にはさんでほしくない、と思う。

でも幸い私はナンシーを愛読する読者だったわけで、好き嫌いも似通っていたから、
彼女の小気味のいい有名人批評は、「勘違い」している輩への容赦のない愛の砲弾は、胸のすく思いであった。
現代なら、そういうターゲットは枚挙にいとまがないというのに残念なことである。

有名人イジメと取られるかもしれないけれど、ナンシーに取り上げられなければ、
有名人ではないと言い切れる。
ナンシーに取り上げてもらった、その、ステータスと引き換えに、
厳しいコラムを書かれて大きくなっていくのである。

私の持っていた、また別バージョンの「小耳にはさもう」文庫は、突っ込みどころ満載なやつに献上した。
やつは、「ナンシーのように突っ込める人になろう」などと思い違いをしていなければいいな。
私の思いは、「ナンシーに突っ込まれないようにイタい所を改めなさい」という思いなのだけど(笑)。
私の思いが伝わったようなら、こちらのベストセレクションも献上しよう。


39歳の若さでナンシー関が亡くなって、この6月ではや10年となった。