遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

和歌山近代美術館のマーク・ロスコ

イメージ 1

 
和歌山城の桜が8分咲きの頃、その南隣の和歌山県立近代美術館の名品に会いに行く。

ご存知、徳川御三家の居城であった和歌山城

その三の丸跡に建てられた、黒川紀章設計のモダンな県立近代美術館は、

和歌山城と見事なコントラストをなす。


ここに、マーク・ロスコがあると知ってから、いつかは訪ねてみようと思っていた。

先だってようやくそのチャンスが巡ってきて、

ロスコは所蔵されているが、展示されているのかよく分からないまま

重厚で十分な幅のとられた、エントランスまでの石段をひとりで上がっていった。


会場に入ってまもなく、「参道」に佐伯祐三の6作品が並べられていて、

これで「奥の院」には、ロスコが待っていると確信した。

案の定、たて176cmよこ136cmkの大きなロスコの「赤の上の黄褐色と黒」(1957年)が、

ぽつんと白い壁に掲げられていた。

少しはなれたところに観賞用のベンチが置かれていて、1点だけのロスコ・ルームといった趣。

世界中の美術館にロスコの絵は散らばっているが、

その作品の前にはベンチが置かれていることが多いような気がする。

画像は、和歌山近代美術館とは無関係だが、どこかの美術館とロスコの作品である。

和歌山のベンチはもっといいものだったが、雰囲気は、どこもざっとこんな感じであろう。


作品前のベンチにしばらく腰掛けて、誰もいない美術館でロスコの作品と対峙。

深い底から浮かび上がってきたような褐色に、心が鎮まっていく。

永遠が見える。

会えてよかった。


ご当地作家の浜口陽三の作品には、残念ながら会えなかったが、

ピカソ、ミロ、岸田劉生梅原龍三郎などの作品などをたっぷり堪能した。

井田照一の特別展も同時開催で、この作家の端正でモダンな作品にも心を奪われた。


帰りは、和歌山城の本丸下の桜の下を歩いて帰った。