遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

エージェント6/トム・ロブ スミス

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エージェント6 〈上・下〉   トム・ロブ スミス   田口 俊樹 (訳)  (新潮文庫)



に続くトム・ロブ・スミス作のレオ・シリーズ3部作の完結篇「エージェント6」。


時は1950年、ソビエトの国家保安省の捜査官レオは、

アメリカから公演のためにやってきた共産主義者アメリカ黒人歌手の

視察の案内役を務めたことがきっかけで、

一方的な思いを持つ美人教師ライーサと偶然に結ばれることとなる。

このあたりの物語を吹く風は、私を夢中にさせ、作者の並々ならぬ手腕を感じ、


を読んでいるような錯覚にとらわれた。


ライーサは当然に、このシリーズの第1作から登場する、レオの愛すべき妻である。


時は15年流れ、1965年、ライーサは教育界の重鎮になり、ソ連の有効使節団を率いて、

ニューヨークは国連本部での少年少女コーラス・コンサートを成功裏に終わらせる。

しかし、ニューヨークに同行した養女にして愛娘であるゾーヤとエレナも絡んで、

ライーサの身に、FBI捜査官イェーツが仕組んだ嵐のような大事件が降りかかる。


さらに時は流れ、1980年。場所はアフガニスタン

レオはアヘンに蝕まれた体に鞭打って、アフガンで秘密警察の教官の職に就いた。

アヘンに溺れて教壇に立たない教師のもとを生徒は離れていき、

ナラという美しい生徒がたった一人残った。

レオは、この教え子と共に、残された僅かな時間を何とか駆使して、ニューヨークへ行こうとする。


1950年から30年にわたるレオと、その家族の大河小説である。

また、レオを取り巻く人間たちとその家族を描いた大河小説である。

主人公レオの愛妻と養女2人に向けた、まるで神のような無償の愛に心打たれるのである。


「チャイルド44」「グラーグ57」「エージェント6」、

順序を守って一気に読まれることをおすすめする。


トム・ロブ・スミスの次なるシリーズが待ち遠しい。