遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

蝶のように舞い、蜂のように刺す/モハメッド・アリ

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【22歳という若さで世界ヘビー級チャンピオンのタイトルを手にしたモハメッド・アリは王座奪還に燃えるソニー・リストンをわずか1ラウンドでKOしてしまう。アリはリストンが反撃するチャンスも与えず、チャンピオンの圧倒的な強さを世界に見せつけた。】

 これは、この写真のキャプションである。当時は、アリはまだカシアス・クレイと呼ばれていた。
 この写真は、当時子どもだった私には、衝撃的映像であった。マット上に横たわる敗者に向かって、何かを叫んでいる勝者の姿に、畏怖の念をおぼえた。この時のショックは、いまだに忘れられない。

 1960年のローマオリンピックのボクシング、ライトヘビー級で金メダルを獲った18歳のアリは、故郷に凱旋中、白人専用レストランで入店拒否に遭い、その怒りからオハイオ川に金メダルを投げ捨てた。

 金メダルを川に捨てたことは、アトランタオリンピックで再度金メダルのレプリカを授与された頃に知ったが、あのマット上の叫びは、ソニー・リストンではなく、当時のアメリカ社会への罵倒であったのかもしれない。

 この1965年の、ソニー・リストンとのリターンマッチは、私のベスト・マッチである。この試合で、アリが最初に繰り出した目にも止まらぬ一発のパンチが、リストンをマットに沈めた。

 その後の、「蝶のように舞い、蜂のように刺す」活躍はもとより、リング外での彼の反戦・反差別の闘いを知らない人は少ないであろう。

 アメリカ人へのアンケートで、「もしクローン人間を造るとしたら、誰がいい?」てな質問に、マイケル・ジョーダンマザー・テレサレーガン元大統領らと並んでモハメッド・アリも選ばれたらしい。

 アリ、今なら間に合う。けど、リストンは若くして亡くなったから、ジョージ・フォアマンのクローンでも造って、最盛期の二人にリターン・マッチをやらせてあげようか。

 私はモハメッド・アリの1ラウンドKO勝ちにベットする。