遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

驚きの「自炊」生活

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第二次世界大戦でドイツ軍に包囲されたレニングラードは、大変な飢餓状態に陥った。

「卵をめぐる祖父の戦争」で、 http://blogs.yahoo.co.jp/tosboe51/64974157.html

その当時のロシアが描かれていたのだが、

食べるものがなくなった人々は、本の背表紙から「糊」を取り出して食べたという。

わずかばかりの糊を取り出し、まさに糊口をしのぐ。

そのために、いったいどれほどの本がレニングラードから消失したのだろう。

そのことを思い出させたのが、少し前のニュースで、

私にはすぐには理解できなかった「『自炊』代行業者に質問書」という下記の記事。

  東野圭吾さん、藤子不二雄(A)さんら作家、漫画家、漫画原作者計122人と大手出版社7社が5日、紙の本を裁断してスキャナーで読み取り、自前で電子書籍化する「自炊」の代行業者約100社に対し、著作権法違反の疑いがあるとする質問状を送付した。

 質問状は、名前を連ねた作家たちが自分の著書をスキャンする行為を許諾していないことを強調したうえで、
〈1〉今後これらの作家の作品をスキャンするか
〈2〉スキャン依頼者の使用目的をどのような方法で確認しているか
〈3〉法人からの発注に応じているか――を尋ねている。16日までの回答を求めており、内容を見て今後の対応を検討するとしている。

 今回の質問状には浅田次郎さん、平岩弓枝さん、松本零士さんら人気作家、漫画家のほか、角川書店講談社、光文社、集英社小学館、新潮社、文芸春秋が名を連ねた。インターネット上で流通する「電子海賊版」の温床とも言われる自炊代行に対し、出版界を挙げて抗議の姿勢を示した格好だ。

このニュースは何を伝えようとしているのか、唖然とするばかりだった。

わざわざ製本を裁断し、スキャンし、電子書籍として保管したり持ち歩くために、

自炊(じすい)し、その自炊用具が裁断機やスキャナーなのだという。

ネットで捜すと、ガッチャンと本が裁断できる機械は1万円前後で売られていた。

そんな「自炊」生活があるなんて知らなかった、デジタル文明に疎いのは私だけなのだろうか。


今新聞は発行部数を落としていて、とりわけ、東日本大震災以降、

速報性がない新聞は、発行部数ががた落ちになったと聞く。

たしかに、朝の通勤電車でも新聞を読む人は実に少ない。

その代わりに情報端末やスマートフォンが普及してきて、

それで通勤時間帯にニュースを読んでいる人を少なからず見かける。


ニュースはともかくも、紙の本を読むこと以外は、いまの私には考えられないことなのだが、

あと5年もすれば、そういう考え方が変わってくるような気もする。

しかし、それにしても、わざわざ本を背表紙のところで裁断して、

スキャンして電子化するっていうのはもったいなくて、

さらに、いったん裁断した本を100円で再製本してくれるところもあり、

無駄なことをしていると、私のようなおじさんは思わずにはいられない。

いっそのこと、コピーされないような工夫をして著作権をガードしつつ、

はじめから電子化してどんどん発行すればいいのではないだろうか。

そうすれば、たとえば学生さんの教科書なんかは、重いかばんを持ち歩かなくても、

iPadだけで事足りるというようなメリットもあるような気がする。


長く生きていると、理解したり納得するのに時間を要するが、

なんだか楽しい世の中が見られるものである。