2006年の夏の、宮脇賣扇庵の扇子の記事で、
当時、「この店の扇子を買いたいと思いつつ、いくたびかの夏が通り過ぎている」と書いた。
さらにあれからいくたびかの夏が過ぎ、このほどようやく宮脇賣扇庵の扇子を手に入れる。
長女の初任給で何かをプレゼントしてくれるというので、
財布を所望しようと、どんなのにしようか、呆れられるほど思案していた。
そうこうしているうちに、季節は巡り蒸し暑くなってきて、
節電でエアコンの吹き出し口からの風がよく届かないなか、
そうだ宮脇賣扇庵の扇子を買ってもらうことにしようと、方向転換。
トンボを描いた絵柄がほしいと思っていたのだが、
淡い色あいのしっかりした和紙に、
涼しげに描かれた縁起物の瓢箪(ひょうたん)の絵柄を選んだ。
この扇の形、バタバタ煽がなくても優雅に風を送れる。
扇面を小さくして竹の骨を長くとったものが、風を送るのに効率的で、
手元のすこしの動きが、長い竹をしならせ良い風を送るしくみ。
職人さんが、琵琶湖は湖西産の竹を使って、
扇の骨を作っているところを何かで見たことがあるのだが、
それはそれはしっかりしたつくりで、材料とそれを組み上げる技術は、
紛れもない一級品である。
宮脇賣扇庵では、店で売った扇子の修理まで引き受けてくれるようで、
まさに一生ものと言えよう。
私がこの扇子にふさわしい人物かといえば、とても釣り合うものではないのだが、
分不相応のプレゼントだということで、
この夏はどこもかしこもエアコン設定温度は高めだということで、
大切に使うことにする。