遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

「消されかけた男」/ブライアン・フリーマントル

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 英国の作家ブライアン・フリーマントルの代表作、「消されかけた男」。

 主人公はチャーリー・マフィンという情報部員、つまりスパイである。


 英国のスパイといえば、代表格はイアン・フレミングが作った007シリーズの、

ジェームス・ボンドであろう。タキシードの似合う、イケメンスパイである。

 私は子供の頃、ショーン・コネリー扮するボンドを「かっこいいなあ」と思って見ていた。

 今見ても同じ思いである。

 ただし、そう思うのは、ショーン・コネリー扮するジェームス・ボンドにだけだが…。


 で、フリーマントルさんちのチャーリー・マフィンは、独身中年で、風采の上がらないスパイで、

アストンマーチンに乗っていないのは当然としても、タキシードも似合いそうにない男なのである。


 ただ、仕事は出来る。痛快なほど出来る。

 ダメ男の風采で、頭が切れる主人公という設定は、英国ミステリーのひとつの特徴である。

 例えばコリン・デクスターの「キドリントンから消えた娘」のモース警部、

 R.Dウィングフィールド の「クリスマスのフロスト」のフロスト警部などがそれに当たる。


 つまり、分かりやすく言うとコロンボ刑事風なのだ。(ちょっと違うが、イメージが近い。)

 しかし、チャーリー・マフィンがコロンボやフロストと決定的に違って、ボンドに近いところが、

 女に持てるところなのである。


 チャーリーにはステディな女性がひとり居て、不特定多数と浮名を流すタイプではないのだが、

 だからこそ、女性に持てるタイプなのである。


 「いい女は、容貌ではなく内容で男を選ぶ」のである。(んなことないか?)

 マフィン・シリーズは「消されかけた男」が1978年に新潮文庫にお目見えして、

 最新の「城壁に手をかけた男」(2002年発行:私は半年前に読了)まで、いまだに続いている

 シリーズ。人気のほどが伺える。


 まったく肩の凝らない小説である。敢えて、女性にお奨めする。



(「祝2012年オリンピックロンドンで開催!」記念、英国冒険スパイ小説、云々、と書き出したが、TVがロンドンの地下鉄など数箇所でテロらしき爆発があったニュースを伝えている。被害状況はまだ詳しくは判らないが、まったくうんざりする。)