遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

沈まぬ太陽/若松節朗

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監督 若松節朗
製作総指揮 角川歴彦
脚本 西岡琢也
出演者
渡辺謙
三浦友和
松雪泰子
鈴木京香
石坂浩二
公開 2009年10月24日
上映時間 202分
製作費 28億円


原作は山崎豊子で、私は読んでいないが、申し分のない下敷きなのであろう。

渡辺謙が演じるところの、恩地という航空会社の元労働組合委員長は、

左遷のような人事異動で冷遇されっぱなしなのだが、

決して悪魔に魂を売るようなまねはしない、実に立派な人物で素晴らしい。


登場する航空会社は架空の存在だといわれても、

モデルはあの航空会社だと誰でも分かること。

企業内の権力闘争や権謀術数は、具体的なモデルを使わなくとも描ける。

具体的な企業や団体の有りようを問うことは、悪いことではないし、

正義感に満ち満ちた立派なことで、山崎豊子の一貫した精神性はぶれる事がない。


しかし、映画作品自体が素晴らしいかどうかはまったく別問題。


あの御巣鷹山での大事故がベースに有るとはいえ、

前半のドタバタと落ち着かない進行は、

構成も編集も脚本もカメラも感心しないものだった。

山崎豊子の映画化作品「白い巨塔」や「華麗なる一族」に

遠く及ばない作品であった。


202分間私を見続けさせたものは、

恩地という男がどういう運命(会社のイジメ)に翻弄されていくのかという、

その興味だけだったかもしれない。

この国の歴史は、神代の昔から続くイジメの歴史なのかもしれないが、

そのあたりをクローズアップにした、どろどろ作品にしてもよかったのかもしれない。