原作は山崎豊子で、私は読んでいないが、申し分のない下敷きなのであろう。
左遷のような人事異動で冷遇されっぱなしなのだが、
決して悪魔に魂を売るようなまねはしない、実に立派な人物で素晴らしい。
登場する航空会社は架空の存在だといわれても、
モデルはあの航空会社だと誰でも分かること。
企業内の権力闘争や権謀術数は、具体的なモデルを使わなくとも描ける。
具体的な企業や団体の有りようを問うことは、悪いことではないし、
正義感に満ち満ちた立派なことで、山崎豊子の一貫した精神性はぶれる事がない。
しかし、映画作品自体が素晴らしいかどうかはまったく別問題。
あの御巣鷹山での大事故がベースに有るとはいえ、
前半のドタバタと落ち着かない進行は、
構成も編集も脚本もカメラも感心しないものだった。
遠く及ばない作品であった。
202分間私を見続けさせたものは、
恩地という男がどういう運命(会社のイジメ)に翻弄されていくのかという、
その興味だけだったかもしれない。
この国の歴史は、神代の昔から続くイジメの歴史なのかもしれないが、
そのあたりをクローズアップにした、どろどろ作品にしてもよかったのかもしれない。