遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

アウト・トゥ・ランチ/エリック・ドルフィー

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アウト・トゥ・ランチ

■パーソネル
エリック・ドルフィー(bcl,fl,as) 
フレディ・ハバード(tp)
ボビー・ハッチャーソン(vib)
リチャード・デイヴィス(b)
トニー・ウィリアムス(ds)
          
■収録曲
1. ハット・アンド・ベアード
2. サムシング・スイート・サムシング・テンダー
3. ガゼロニ
4. アウト・トゥ・ランチ
5. ストレート・アップ・アンド・ダウン

録音:1964年2月25日 ニュージャージー


遠き昔、輸入レコード1枚2500円、若者の初任給に匹敵した時代があったという。


時は流れ、「アウト・トゥ・ランチ」は、1964年の録音なので、

大卒初任給は2万円台になっていたが、それでも輸入レコードは高嶺の花だったろう。

それが今は、782円(本日現在のAmazon価格)でこの輸入盤が買える、

いまや時間給で輸入アルバムが買えるのである。

でも、時給800円の若者は、エリック・ドルフィーのCDなんて買わないだろうなぁ。


で、70年代にジャズを聴き始めた私は、ジャズ喫茶で輸入レコードを聴いていた。

まだブルーノート・レーベルが輸入盤でしか手に入らない頃、このレーベルは高嶺の花だった。

私のバイト先の老舗のレコードショップでは、ブルーノートは扱っていなかったので、

あこがれのレーベルは、ジャズ喫茶で出会うしかなかったのである。


まずジャケットがかっこよくて、この「アウト・トゥ・ランチ」などは、

一度見たら忘れないほどのインパクトがあった。

そしてレコード演奏が始まるや否や、ショッキングな音が押し寄せる。

不協和音の連続で、1曲目の冒頭から、頭がくらくらする、

小学3年生で初めてコーラを飲んだときほどではないにしろ、

カルチャーショックを受けることになる。

でも、大音量で聴くエリック・ドルフィーは、実にスリリングで、

ああいう密室で大きくなってひねくれてしまったのかと、思う今日この頃なのである。


ただ、今にして思えば、60年代から日本映画に流れる音楽は、

不協和音や挑発的な演奏形態で花盛りだった。

たとえば、黒澤映画の佐藤勝など相当新しかった。

なので、映画好きの5年上級生あたりは、すでに不協和音に免疫を持っていたので、

エリック・ドルフィーが前衛的な演奏をしても、いまさら驚きもしなかったろうと思う。


この不協和音、子どもが聴けばゲラゲラ笑うかもしれない、

コミックバンドと紙一重の前衛演奏なのかもしれない。

しかし、エリック・ドルフィーはこの最後のアルバムで、

大真面目にバス・クラリネットとフルートとアルトサックスを順に持ち替え、

トランペットのフレディ・ハバードとバトルを繰り広げている。

4ヵ月後に36歳で亡くなることを予感するように。


他のエリックドルフィーの記事

アット・ザ・ファイヴ・スポットVOL.1
http://blogs.yahoo.co.jp/tosboe51/23134931.html

アット・ザ・ファイヴ・スポットVOL.2
http://blogs.yahoo.co.jp/tosboe51/51036463.html