数年前になるが、仕事で必要になって自治体の格付けをしたことがある。
総務省がインターネットで開示している市町村の財政状況や、
これはなかなか興味深い仕事だったのだが、ついでに関西以外の都市にも目を向けると、
当時、財政状況だけで見ると、トヨタ景気に沸く東海地域のいくつかの都市は、
トヨタや関連企業とそこに働く従業員の税収とでとても潤っていて、
目と鼻の先にある経済的に冷え込んでいた関西の各都市とは、格が違っていた。
それから数年経った今年、新聞か何かの書評でこの1冊「この街に住め!」と出会った。
私は、現住所に移り住んで4年、子育てもほぼ終わり、
老後が数年後には始まろうかというときを迎えている。
なので、いまさら「この街に住め!」と言われてもなぁという気がするが、
興味本位で買って読んでみた。
まずは、相変わらず東海地域や首都圏の都市を中心とした財政状況のいい街を紹介し、
それに続きそうな「早期健全化団体」となっている自治体について、
こういう街に住めば大変ですよと教えてくれる。
給食制度の有無や病院のベッド数の数、図書館の蔵書数、
犯罪率、交通事故発生率、火災発生率などを、具体的な都市名を上げて比較してくれる。
小学校の給食普及率は全国的に高いのだが、中学校給食になると実に差が大きく、
特に関西は普及率が低く、これまた自治体によって差がある。
給食制度の有無などは、お母さんにとっては大問題で、
「給食費」というコストと、「毎日お弁当を作る」というコストの差は、
「実費」以上に大きな負担となることは、弁当を作ったことのない私にも分かる道理である。
また、すぐお隣の街との幼稚園保育料補助金が、3年間で91万円も差がつく事例が紹介されていて、
もし、これから新しく住むところを決めようとしている人には、少なからず参考になるデータであり、
どこに住むかを決めるための一つの判断材料に使えそうで、ありがたい指摘である。
住民税は今のところどこで住んでも同じなのだが、
名古屋市の、住民税を下げる下げないの河村市長と市議たちの対立構図に見られるように、
今後は住民税についても、差が出てくることになるかもしれない。
物の値段を比較して、何をどこで購入するかを決めるのと同じで、
どこで生活すればそのコストはどれくらい差があるのか、
消費者のように私たちは考えていく必要があると思ったしだいである。
最後に、本書では紹介されたポジティブ&ネガティブ諸データを組み合わせて、
「子育て世代に住みよい街ベスト100」「リタイア後に住みよい街ベスト100」、
「住みよい街ベスト200」を独自にランキングしてくれている。
近隣の「住みよい街」を見てみると、高級住宅地か都心に通いにくい田園都市に大別される。
そして、あたりまえのことだが、財政状況がいい街=住みよい街ではないことも、興味深い。
家族ごとに住みよい基準が違うのだが、我家も夫婦二人きりになったら、
次の街を探すかもしれないので、自分の基準をしっかり持とうと決心した。
尖閣列島問題で日中摩擦が起きるのも無理はないなぁと感じたのだが、
「夢の島」には企業や工場誘致が実現すると高額税収能力があり、
「宝島」に変身しそうで、それを取り込もうという自治体の必死の姿勢はうなずけるのである。
それにしても、同じ制度の住民税を払っている国民が住んでいて、
そういう企業の有無の差で、自治体サービスで差が出るというのも、なんだか不思議なお国である。