遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

マーラー:交響曲「大地の歌」/シノーポリ

イメージ 1

アルト、テノール独唱と大オーケストラのための交響曲大地の歌

作曲:グスタフ・マーラー
指揮:ジュゼッペ・シノーポリ
演奏:ドレスデン国立管弦楽団
   イリス・ヴェルミヨン(アルト)
   キース・ルイス(テノール
録音:1996年1月 ドレスデン ルカ教会

大地の歌
第1楽章 大地の哀愁を歌う酒の歌
第2楽章 秋に寂しき者
第3楽章 青春について
第4楽章 美について
第5楽章 春に酔える者
第6楽章 告別


マーラーの9番目の交響曲大地の歌」、

第9交響曲とナンバーは付いておらず、初演は1911年で、

ほぼ100年前の交響曲である。

オーケストラの響きは不思議なきらびやかさがあり、まさにマーラーサウンドである。

奇数楽章をテノールの歌曲が、偶数楽章にアルトの歌曲が歌われ、

古典的な交響曲とはまったく趣を異にする。

歌の詩は、李白や孟浩然の中国の漢詩(ハンス・ベトゲの訳)を取り入れている。

大地の歌」のなかで、ドイツ語の歌詞で歌われる歌曲は、いわゆる古典的なドイツ歌曲ではない。

100年前のウィーンで、晩年のユダヤ人の作曲家が、

中国の詩をモチーフに、大オーケストラと歌曲を混在させて創作した、けだし自由な音楽である。

事実、原詩に合わせてのことだろう中国音階がよく出てきて、

この交響曲について何も知らないころは、

ドイツ語の歌詞さえ中国語に聞こえてきたこともある。


1楽章から5楽章まで30分あまりの長さで、

6楽章だけで30分以上もあるという、自由な交響曲である。

私はその長い6楽章も含めて、アルトで歌われる偶数楽章が好きである。

6楽章の荘厳な感じは、格調高いアルトならではの魅力であるが、

たとえば、4楽章後半の歌詞と音の響きは、創作料理のようにとてもユニークで、

このアルバムのイリス・ヴェルミヨンの個性がキュートで素晴らしい。

アルトだから気高くて、でも、アルトなのにキュートだから、

偶数楽章をバリトンで歌うアルバムも存在するが、アルトの方がおすすめだと思う。


亡きシノーポリドレスデン国立管弦楽団は、非の打ち所のない緻密で繊細な演奏で、

こってり感がないところがとても上品である。


私がもしテノールやアルトの歌手だったとしたら、

大地の歌」の演奏依頼が来たら、とても難しいので歌えませんというのは恥なので、

病気を理由に辞退するだろうと思う。

この大作は、演奏する方にまわらないで聴く方に専念するべきだと思う、

このCDは、多分100回くらいは聴いていると思うが、

何度聴いても新鮮な大作である。