ほぼ100年前の交響曲である。
奇数楽章をテノールの歌曲が、偶数楽章にアルトの歌曲が歌われ、
古典的な交響曲とはまったく趣を異にする。
「大地の歌」のなかで、ドイツ語の歌詞で歌われる歌曲は、いわゆる古典的なドイツ歌曲ではない。
100年前のウィーンで、晩年のユダヤ人の作曲家が、
中国の詩をモチーフに、大オーケストラと歌曲を混在させて創作した、けだし自由な音楽である。
事実、原詩に合わせてのことだろう中国音階がよく出てきて、
この交響曲について何も知らないころは、
ドイツ語の歌詞さえ中国語に聞こえてきたこともある。
1楽章から5楽章まで30分あまりの長さで、
6楽章だけで30分以上もあるという、自由な交響曲である。
私はその長い6楽章も含めて、アルトで歌われる偶数楽章が好きである。
6楽章の荘厳な感じは、格調高いアルトならではの魅力であるが、
たとえば、4楽章後半の歌詞と音の響きは、創作料理のようにとてもユニークで、
このアルバムのイリス・ヴェルミヨンの個性がキュートで素晴らしい。
アルトだから気高くて、でも、アルトなのにキュートだから、
偶数楽章をバリトンで歌うアルバムも存在するが、アルトの方がおすすめだと思う。
こってり感がないところがとても上品である。
私がもしテノールやアルトの歌手だったとしたら、
「大地の歌」の演奏依頼が来たら、とても難しいので歌えませんというのは恥なので、
病気を理由に辞退するだろうと思う。
この大作は、演奏する方にまわらないで聴く方に専念するべきだと思う、
このCDは、多分100回くらいは聴いていると思うが、
何度聴いても新鮮な大作である。