遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

カラフル/森絵都

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 カラフル   森 絵都   (文春文庫)

死んだはずの「ぼく」の魂にむかって天使が言った。「おめでとうございます、抽選にあたりました!」。そうして、ぼくは輪廻のサイクルに戻るために、下界にいるだれかの体を借りて(天使業界では「ホームステイ」というのだそうだ)前世で犯した悪事を思い出さなくてはならなくなった。
 
   乗り移ったのは「小林真」という自殺したばかりの14歳の少年。ところが、真は絵を描くのが得意な以外は、親友と呼べる友だちもいない、冴えないヤツだった。父親は自分だけよければいい偽善者で、母親はフラメンコの先生と浮気中。しかも、好きな女の子は、中年オヤジと援交中ときた。しかし、ホームステイの気楽さも手伝って、よくよく周りを見回してみると、世界はそんなに単純じゃないってことが次第にわかってくる。 


次女が友だちから借りていて、妻も読み、

私にすすめてきたのが「カラフル」。

森絵都の作品を、はじめて読む。


人間には、目に見えないのだけれど、

カラフルでさまざまな形の触手がいっぱい付いている。

その触手で、たくさんの人とつながっている人もいれば、

まったくそうでない人もいる。


まったくつながっていないと思っていても、ほとんど錯覚だったりして、

カラフルでさまざまな形の触手をいっぱい持っているので、

実は誰かとどこかで触れ合ったりしている。

そのことに気付いていなくて、悲嘆したりするのだけれど、

冷静によく観察すれば気付きがある。


人の一生、生まれて死ぬまで、悲しい段落もあるだろうけど、

楽しい章や、充実した節もたくさんある。

「楽しかった」という過去形でもいいだろう、

何かにつながっているはずだと、探してまわること自体も楽しいことだと思う。


だから、長生きしたいと再確認の57歳の秋、なのである。