遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

ダイジェスト版 大相撲

イメージ 1

大きな手術や脳梗塞をくぐり抜けてきて、身障者手帳を持つ父は、

先月81回目の誕生日を更新した。

父親の夕食開始時刻は、母親がまだ生きていた昔から、午後6時と決まっている。

それは大相撲のTV中継が終わる時刻で、それにあわせて夕食が始まるのである。

それが今場所は、夕食後の「大相撲の全取組」のダイジェスト放送を見ることになった。


私もどれどれと、6時台に登場した「ダイジェスト版 大相撲」を録画して相撲観戦を試みた。

番組には解説者は登場せず、アナウンサー2人で番組を仕切るのである。

名実況アナウンサーが2人がかりで番組を進行しても、

やはり解説者がいないと、とてもさみしいと感じてしまう。

舞の海に一勝負10秒しゃべってもらうだけで、きりっと締まった番組になるのに少し惜しい気がした。


ただ、そのほかはよく出来ていて、短い放送時間にもかかわらず、

取り組み前には土俵上の両者の、得意のスタイルや今場所の相撲の特徴点を、

コンパクトに紹介していて前提知識を満たしてくれる。

また、早い勝負や、きわどい勝負や、重要な取組はスローで再現もしてくれる。

勝ち越しを決めたり、上位陣に土をつけたりした、おりこう力士は、

インタビュー部屋で、その健闘を称えてもらうというあの儀式も放送される。

土日の少し長いバージョン放送では、十両の全取組の一気放送という、

痛快な試みも披露してくれる。

高見盛の、最後の塩を掴む前の気合入れシーンも、ちゃんと流してくれる。

幕の内の取組も、スピーディな展開で全体的には悪くない。

大相撲名古屋場所の放送がダイジェスト版に変わることについて二所ノ関親方(元関脇・金剛)は「しこ名で土俵に呼び上げられてから、仕切りで顔がだんだん紅潮していく。そういうプロセスを見せられないのも残念」と語った。


そういうプロセスが面白いのは、千秋楽で全勝同士が対戦するというようなシチュエーションのときだけで、

普段はそんなもの別に見たくもない。高見盛は楽しいけれど。

二所ノ関親方(元ホラ吹き・金剛)にファン心理が分かってたまるか、と言いたい。


どうせいつまで待っても、相撲協会は改革などしそうにないので、

TVの生中継は当分中止して、面白いダイジェスト番組を充実させていく手もあるのではなかろうか。


それはそうと、今に始まったことではないのだろうが、名古屋場所の桟敷は、女性の姿がとても目立つ。

年齢もバランスよくばらけていて、観客の少ない会場を明るくしている印象である。

ちんたら生放送ではない「ダイジェスト版 大相撲」を観て、

新しい大相撲のファンがたくさん誕生することだって想定できる。

神事を司るという厳かな精神と、古式ゆかしい形式は踏襲したまま、

老若男女に広く愛される真の国民的スポーツに変身してほしい。