遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

知的生産の技術/梅棹忠夫

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「知のデパート」の静かなる閉店である。

今日の朝日新聞は、天声人語でこのような書き出しで、

先日亡くなられた梅棹(うめさお)忠夫の人となりを紹介していた。


私の書棚には、梅棹忠夫の「知的生産の技術」が、30年以上も住み続けている。

私の新書、奥付を見ると、1973年発行の第17版とある、

二十歳の頃読んだのであろう、とても刺激的な1冊で、

読後は、B6サイズの京大カードなるものを買って、カードを保管するボックスも買って、

知的生産のまねごとのようなことをやっていたのを懐かしく思い出す。


じつは、この春先にとある事情があり、京大カードを買おうとした経過がある。

結局は方眼罫のA5ノートを買ったのだが、カードのほうが使い勝手がいいなあと、

ノートを使いながら思っているなか、梅棹さんの訃報に接した。


いつか「アウトプット」するために、「インプット」した情報を、

どのように整理すればいいのか、若い私はこの新書に教わったのである。

あまりアウトプットする機会のない、社会人になったので、

また、少しお金が入ってカメラなどを買ったりしているうちに、

私の情報の整理は、主に写真やそのネガに偏っていった。


若い日の、コンサートや映画や美術展や読書について、

カードに主な情報メモや感想でも記していれば、

いまのブログの記事に役立ったろうにと悔やまれる。


梅棹さんが1969年発行の本書ですすめていた、

B6サイズのカードやひらがなタイプライターや、

ダ・ヴィンチの手帳やスクラップブックやキャビネットファイルや

日記帳や原稿用紙はといったツールは、

すべてパソコン1台で用が足りる時代となった。


ツールやハードは揃ったが、それをどのように使うかというソフトは、

今からこの本を読んで技術を取得しても遅くはないような気がする。

梅棹さんは、40年前に大きなヒントを読者に与えてくれた、

この大きなヒントを、インターネットや新しい情報端末機で、

今の時代に活かさない手はない、それ自体が知的生産だといえる。

この1冊ほど、時代を先読みした書物はないのではないかと思える。


謹んでご冥福をお祈りする。