ワールドカップはベスト4が揃った、
残念ながら南米の強豪、ブラジルとアルゼンチンは姿を消してしまった。
南米はサッカーのみならず、
フォルクローレやサンバやタンゴなど、土着の音楽も盛んな地域で、
サッカーはいまいちのベネズエラはMLBにいい選手を送り出し、
クラシック界では、指揮者グスターボ・ドゥダメルと、
シモン・ボリバル・ユース・オーケストラの存在がひときわ大きく、
世界中の聴衆を楽しませている。
ベネズエラには、130のユースオーケストラ、60の子供オーケストラがあり、
25万人の子どもたちがそのシステムに参加しているという。
このシステムは、クラシック音楽を演奏させることによって、
貧しい子供たちを善良な市民に育成し、麻薬や犯罪から守り、
社会の発展に寄与させることができるというプロジェクトなのである。
ベネズエラの人口は2800万人で、
私の住む近畿地方と、隣の中国地方で、合わせて人口が2800万人。
近畿と中国地方で、青少年の参加するオーケストラがいくつ存在するだろうか。
犯罪が多発するベネズエラで「音楽は社会を変える力となる」とのコンセプトのもと、
クラシック音楽の裾野を拡げる大規模システムが機能していることに、
世界に冠たる先進国に住む人間として、驚くほかない。
そして、このプロジェクトの頂点に位置するのが、同国の英雄シモン・ボリバルの名を冠した、
このマーラーの5番の生き生きとした演奏には、驚嘆する。
トランペットやホルンを中心とした金管部は、
この交響曲全体の骨格を成すきわめて重要なパートになるのだが、
不安のかけらもない微動だにしない存在感に終始する。
また、後半の弦の響きは煌びやかで伸びやかで、
忠実に鳴り響き、文句のつけようのない演奏である。
ルキノ・ビスコンティの「ベニスに死す」に使われた、
第4楽章のアダージェットは、この部分だけ過去に生で聞いたことがある。
最愛の女性に捧げる「アルマへの調べ」は、この4楽章に命名されているようだが、
マーラーのアルマヘの愛は、
全篇にわたって狂おしく熱く語られているのではなかろうか。
100年前のウィーンでの熱き血潮が、今のベネズエラの青年たちにも、
よく伝わっていて、音でその情熱を難なく再現して見せてくれるのである。
ベネズエラの国家的プロジェクトは、
このアルバムにその成功が見て取れるのである。
ドゥダメルとシモン・ボリバル・ユース・オーケストラの演奏は、
以下を参照されたい。東京とロンドンでのコンサートのアンコール部分である。
http://www.youtube.com/watch?v=VS1tRoCAr-Q
http://www.youtube.com/watch?v=_El7qwib0dc
以下を参照されたい。東京とロンドンでのコンサートのアンコール部分である。
http://www.youtube.com/watch?v=VS1tRoCAr-Q
http://www.youtube.com/watch?v=_El7qwib0dc