彼女の71歳の時の作品である。
たて165cmよこ211cmの大きさの日本画である。
この「径」の母と子と犬の買い物帰りの行列から放たれる、
日の光と幸福感に満ちたみずみずしい躍動感に、嬉しくなる。
元気をもらえる素晴らしい作品である。
何週か前のNHKの「日曜美術館」では、
鎌倉の小倉の自宅に「径」の下絵が残っており、それらが紹介されていた。
完成作品とはかなり異なるスケッチブック大の習作から、
大きさも構図も完成品に近い大きい下絵まで、その総てが紹介されていた。
それらを見ていて、作品の構図への試行錯誤が見て取れて、実に興味深かった。
70歳を超えて、仕事にまっしぐらに打ち込むその精神力、
その心意気に触れただけでも、元気をもらえそうで、ありがたいことであった。
遊亀は、100歳を超えても創作を続けていて、
院展には1928年に入選以来、1998年まで連続出品した。
遊亀は植物画と並んで人物画、それも女性を描いてきた画家であった。
斬新な画法と溌剌とした女性の姿に、作家自身の女性としての自信がうかがえるのである。
作品にした、描いてきた女たちがいつまでも溌剌と作品内に定着しているように、
遊亀自身も、歳をとらないまま創作してきたような錯覚にとらわれる。
伝統的な日本画の線と色使いの美しさを保ちつつ、
西洋的な大胆な表現方法から生まれ出でた遊亀の女性たちの魅力は、
他に例を見ない、他の追随をゆるさないものである。