遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

レベッカ/アルフレッド・ヒッチコック

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監督 アルフレッド・ヒッチコック
製作 デヴィッド・O・セルズニック
原作 ダフネ・デュ・モーリア
出演者
ジョーン・フォンテーン
ローレンス・オリヴィエ
ジョージ・サンダース
音楽 フランツ・ワックスマン
撮影 ジョージ・バーンズ
アメリカ(1940年製作)



レベッカは1940年のアカデミー作品賞と撮影賞を受賞、

同時に監督賞にノミネートされていたヒッチコックは、

怒りの葡萄」のジョン・フォードに賞をさらわれていた。

しかし、ヒッチコックのハリウッド・デビューのこの作品は、

実力を発揮できた成功作だったのではなかろうか。


ヒッチコックはセルズニックの言いなりだったというが、

私は、後に大御所になった彼の、世に有名な作品より、

この「レベッカ」の初々しさが好きである。


冒頭から輝くばかりに美しいジョーン・フォンテーン、

まだ20代前半の彼女は、「レベッカ」がハリウッドでの主演第一弾でもあった。

彼女の初々しさも素晴らしく、ヒッチコックはきれいな女優を、

より美しく撮る術を終生心得ていた。


先妻レベッカに先立たれて、独身貴族だったローレンス・オリヴィエに求婚されて、

フォンテーンは、彼の住む海岸近くの街で新婚生活をはじめる。

しかし、見知らぬ街の大邸宅での生活に馴染めず、使用人たちから受け入れられず、

先妻レベッカの死を惜しみ、そのショックからから立ち直れない人たちばかりの中での、

生活となってしまう。


そして、レベッカの死について不信感をあらわにする人たちの中で、

フォーンテーンは、ストレスを感じる暮らしを続けることになる。

本来は頼りになる筈の夫は、何だか秘密めいた態度で彼女に接する。

嵐が丘」からわずかしか経っていない本作でのオリヴィエは、

肩の力の抜けた余裕の演技で、冷たい感じをよく出している。


しかし、この映画はローレンス・オリヴィエの映画ではなくて、

ジョーン・フォンテーンの映画だったといえる。

オリヴィエのセリフが多過ぎ、語らせすぎだとも思った。

黙っていても、怪しいムードが醸し出せるのに惜しいことをした。