遊びをせんとや生まれけむ

あらゆる芸術の士は人の世を長閑(のどか)にし、人の心を豊かにするが故に尊とい。夏目漱石

土佐の和紙/伝統工芸

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初来日したオバマ大統領と鳩山首相が共同会見した首相官邸

記者会見に臨んだ彼らが背にした壁は、おそらく和紙の壁だと思われる。
http://www.asahi.com/politics/update/1113/TKY200911130376.html?ref=rss

2人の記者会見を見ながら、その和紙も気になっていた。


首相官邸のあの美しい芸術的な和紙の壁とは比べ物にならないが、

我が家の内装は、土佐の和紙を使用した。(画像はその我が家の和紙の壁)

水まわりや押入れや納戸は和紙と馴染まないので、化学的な材質の壁紙だが、

我が家を設計してくれた建築士のお奨めで、

その他の壁紙は、総て生成りの風合いの土佐の和紙に統一した。

天井も同じ素材の和紙にした。


コストは、ビニールの壁紙とほとんど同じで、

総て同じ製品を利用したので、とても割安で仕入れられた。

それから、自然素材なので、貼るための糊にさえ気をつければ、

化学物質がまず発生しない優れものである。

私や次女は、化学物質に少し反応するタイプなので、

和紙を内装に使ったことは大正解だった。


高知は、コウゾやミツマタなど和紙の原材料の生産量は日本一で、

手漉きの和紙も多く作られている。

我が家の壁紙は手漉きではないだろうが、

原材料の繊維がエンボスのような手触りで確かめられる。

もちろん、その繊維が織り成す自然な紋様も目で確かめられる。


西本願寺の御影堂の修復ドキュメンタリーで、

この紙漉きの道具の作り手が、年々少なくなってきていると知る。

水に溶かした和紙の原材料をすくい取る道具である、桁と簾(す)は、

数軒の作り手しかいないらしい。


それから、繊細な紙漉きの簾を作るには、

細い竹ひごを、細く仕上げられた強力な生糸で編み上げなければならないのだが、

その編み上げ用の特殊な縒(よ)りをかけた生糸の作り手は、

驚いたことに、わが国に一人しかいないのである。


岐阜県に住む、まだ若いとても麗しい女性が日本でただ一人、

ご主人のサポートを受けながら、

大掛かりな糸縒り用の機械で、この生糸を紡ぎ続けている。


ぽんと50億ドルをバラクにお土産として渡してあげるのもカッコイイが、

(わが国への民生支援も早くやってほしいものである)

世界中に配信した共同記者会見の、両首脳のバックの壁のオブジェのような和紙は、

世界に誇れる実に素敵なカッコイイ伝統工芸品である。

なのに、その伝統工芸文化は、実に大変な窮地に立たされている。


日本の伝統美の粋を誇る首相官邸が、

木や竹や和紙をふんだんに使って、

これらがわが国の伝統だと世界に向かって言いたいのとは裏腹に、

和紙を漉くための糸の作り手が一人だという現実が、実に悲しい。